晴れない空の降らない雨

劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

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 『響け! ユーフォニアム』の続編にあたる『響け! ユーフォニアム2』は、原作小説2冊を1クールにまとめた分、第1巻のみの1期目よりもテンポよく展開するし、登場人物もより深く掘り下げるからドラマとしても盛り上がって断然面白い。途中からはほぼ毎回のように感動していた気がする。1期目が微妙だったという人でも、一見の価値はあると思う。
 本作はその総集編で、第3巻にあたる後半部分のみに絞ったもの。といっても単なる総集編で終わらせないのが京アニというか、新規カット含めカロリーの増強はありすぎるくらいだ。それでも所詮は総集編であって、テレビシリーズのファンのための作品にすぎない。逆にファンにとっては、フル演奏や新規カットは嬉しいだろう。ちなみに省かれた前半部分の実質的な主人公だった2年生たちが、今週末公開の『リズと青い鳥』の主役。
 
 1期のときから、レイアウトと撮影処理の凝り具合が話題になっていたが、2期でもあいかわらずというか、ますます強化されていて技のデパートみたいで驚く(あと楽器の光沢が進歩している)。しかし、この総集編で改めていくつかのシーンを観てみると、くどい感じがして少しネガティブな印象を抱いてしまった。もっとも緩急つけた中から「急」を中心にピックアップするのだから当たり前か。
 それでも、レンズ特性の前面化のさせ方や、奇抜な構図やカッティングが引っかかる箇所がちらほら。例えば校舎裏で久美子があすかを説得するシーンは、シリーズ屈指の泣ける箇所だけど、次々とアングル切り替えて久美子をとらえるのが何ともダサくないか。こことか、カット割らずに全身芝居で見せてくれたら素晴らしくなったと思うのだが。
 ほか、被写界深度によるぼかしも一部さすがにキツすぎないかとか、演奏シーンもそんなショット挟まなくてよいだろうとか。とにかく大事な場面では、シンプルに見せたほうがむしろ映えると思う。この劇場版だけなぜか監督の小川太一というお方は、ふだんのレイアウトや演出ではあまり奇を衒うことなく印象に残るものご多く、自分好みなのだが。
 
 以上はテレビシリーズへの文句だけど、本作の新規部分への不満も1つある。この総集編では、小学生のあすかの元にユーフォニアムが届くシーンが冒頭に置かれ、描写がテレビよりも詳しくなってきる。あすかに焦点を絞った作りなので、それ自体はまぁよいとする。が、そこで、その場に自分しかいないのに、チビあすかが「開けていいのかな」だの何だのと独り言を垂れまくる。本シリーズは、アニメらしくないアニメを目指していたはずなので、アニメに典型的な幼児声も手伝ってけっこう残念だった。
 いきなり知らない人から自分宛てに巨大な段ボールが届いた。開けてみたら大きな金属の楽器が入っていた。そんなチビあすかの気持ちを、表情や動きなどの芝居で見せきるべきだったと思う。それができないなら、高校生あすかによる回想モノローグつきの数カットで済ませたテレビ版でよかった。