チッコーネ

KTのチッコーネのレビュー・感想・評価

KT(2002年製作の映画)
3.5
北朝鮮、日本と仇敵の多い韓国が、さらに内部分裂していた時代の史実を物語化している。
軍事政権当時のやり口は、北朝鮮に勝るとも劣らぬ残忍さであったことが伝わってくるが、実行犯として描かれるのは立身出世主義者(韓国)と、戦時でしか生を実感できないキ●ガイ(日本)。
かく言う私はと言えば「陸幕って何?」と首を傾げるほど平和ボケしているのだが、それにしてもオーバードラマティックなラストは、いかにもフィクションという感じだった。
ただし本作を観た金大中は「おおよそ事実」と語ったようで、彼を取り巻いていた状況に関しては、忠実に描かれている様子。
民主化の鍵を握り、のちに大統領に君臨した政治家のひとりが、領事館もある国でなんら実績のない大学生をボディーガードに、草の根の活動を行っていたとは本当に驚き(しかも過去の暗殺未遂からハンディキャップまで背負わされている)…、孤立無援以外の何物でもない。
拉致事件が日本で起きたがゆえ、本作のような映画が作られたわけだから、その資料価値を充分に受け止めたいところだ。

忠実に役者を追うカメラは、動的な印象を残す。
メインキャストの佐藤浩市、70年代にしては垢抜け過ぎているが、髪型はどことなく赤木圭一郎を彷彿とさせる…、相変わらずいい男。
劇画的なキャラクターを演じる原田芳雄は魅力的、彼の発する「豚は生きろ、狼は死ね」の台詞には大いに共感した(ついでに言うと、江波杏子演じるキャラも超魅力的)。
キム・ガプスほか、若きパク・ソンウンなど韓国陣営の役者たちも活躍を見せる。