ノラネコの呑んで観るシネマ

ザ・フォーリナー/復讐者のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ザ・フォーリナー/復讐者(2017年製作の映画)
4.4
北アイルランド過激派の爆弾事件に巻き込まれ、愛娘を亡くしたジャッキー父さんの復讐劇。
彼は独自に調査し、ピアーズ・ブロスナン演じる元過激派の政治家にたどり着く。
これ作劇がとても文学的かつユニークで、ジャッキーの復讐そのものは全体構造の一部に過ぎない。
今も過去の因縁に突き動かされる、過激派内部のグチャグチャドロドロの愛憎関係が、エスカレートする暴力を生み、ジャッキーはあくまでその結果に対して行動しているだけ。
アクション映画としても一級品だが、サスペンスフルな人間ドラマとしてもかなり見応えある。
これ2年前の中英米合作なのだけど、ブレグジットでアイルランド国境がハードボーダー化されると、北アイルランド紛争が再燃する可能性が囁かれている今、よりセンシティブでタイムリー。
まあ北アイルランド独立派にとっては、納得できない映画だろうけど。
ここまでハードボイルドなジャッキー映画は久しぶりに観た。
かつてトニスコと組んで、傑作「エネミー・オブ・アメリカ」を世に出したデヴィッド・マルコーニの脚本はロジカルで、ブロスナンとマーティン・キャンベル監督の90年代「007」コンビも嬉しくなる。
しかし、この地域の歴史に関して知識が無いと、劇中で起こっていることの中身が掴めない話でもある。
知らない人は、とりあえず「マスター・キートン」を読んで劇場へGO。
北アイルランド紛争をざっくり理解しようと思ったら、ホントにあの漫画が一番手っ取り早い。