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ザ・フォーリナー/復讐者の教授のレビュー・感想・評価

ザ・フォーリナー/復讐者(2017年製作の映画)
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ジャッキー・チェンの出オチでほぼもっているというのが結論。
60歳を過ぎてようやく円熟した、シリアスな演技に踏み切ったという感じ(これまでの彼の演技を揶揄しているという意味では決してなく)で、佇まいや表情だけで悲しみや喪失感、怒りと、どこかサイコパスな雰囲気と、元特殊部隊のツワモノ感を一度に出してしまうのは、もう見事と言うしかない。

そしてこれまでのコメディ的な動きや要素の為に行われていたアクションとその工夫が、単純に人を痛めつけるというベクトルに向かう怖さ、もまたこれまでが大き過ぎるほどの前フリとなっていて、より恐ろしさを増している。

つまりこれもまた概ね、ジャッキー・チェンのジャッキー・チェンによる、ジャッキー・チェンのための、映画とも言える。
そのため、正直予告編以上のものはないとも言えるし、しかし、ここまで振り幅をもってこそのこの領域とも言えるわけで評価が難しい。

そして、脚本や演出はとにかく飲み込みづらい。
人物関係がこんがらがっているし、話も色んなところに行きつ戻りつで軸となる話が、復讐なのかどうかもわかりにくいので、せっかくのジャッキー演技、復讐者としてのカタルシスがかなり削がれている。

恐らく、作り手たちは「真っ直ぐな話」だと飽きられてしまうと危惧したのだろう。
ある種のどんでん返し的な要素や、人物の中にあるグレー感を出したかったのだろうが、結果、グレー止まりでとにかく感情移入しづらい物語になってしまっているのと。
ドラマ部分での説明台詞が多すぎる。
加えて、復讐者として、殺さないとか、ラストのオチもそうだが、残酷さや残虐さの欠落が良くも悪くも、ジャッキー映画としての振れ幅の限界のように感じてしまう。

ただ、革命や政治によって人の命が犠牲になることは気に入らない、と過去作でも言い続けてきたジャッキー・チェンの一貫したメッセージと、それがある種振り切れたところまで見れた、という意味で損はしてないと思う。
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