真田ピロシキ

愛と闘病: 自閉症の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

愛と闘病: 自閉症(2012年製作の映画)
3.7
私自身が自閉症スペクトラムであるが安心して見ることができた。Amazonでのタイトル「誰も知らない究極の愛」は盛りすぎだ。もっと軽くて良いし、そうでなくてはいけない。

本作に登場する何組かの親子は皆が普通で、ある人は自閉症の子供を授かったのを神の試練と、しかし「自閉症の子供を授かって慈愛に目覚めた話は知ってるが私は昔から慈愛に満ちてたのに何で?」と疑問を抱き、ある人は「生まれた時は医者になって欲しかったけど今は皿洗いか庭師の仕事に就ければいい。子供のことは愛してる」とドライに捉え、ある人は自力では世話できなくてグループホームに預けている。これがドラマや劇映画じゃそれこそ究極の愛を描かないと受けは難しいし、子供の方も超レアケースのスペシャルな才能を持った例を取り上げたと思う。でもそういうのって当事者にはあまり有難くないんですよ。

家族と並行して映し出されるのはDLCという自閉症専門の学校。一口に自閉症と言っても程度の差が大きい訳で、それに対応するべく軽度なら健常者と同じ学校に通う手助けを、重くても適性を見出して合った仕事を見つけられるよう多様なプログラムが用意されている。こうした学校はアメリカでも珍しいのだろうが、日本でも発達障害に特化した学校を全都道府県に1校置けたりすればかなり生きづらさを救われる人が多いんじゃないかな。

取材するルイ・セローはかなり率直な物言いをするが、取材を受ける自閉症の子供とは親しくて大変気の良い人なのだろうと感じた。だからと言って近くもなりすぎない。感動物語にはしない距離の取り方に好感が持てる。