あんがすざろっく

わさびのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

わさび(2016年製作の映画)
4.0
女将が切り盛りする小料理屋さんって、常連客が尽きないという話を聞いたことがあります。
僕は行ったことないですけどね。
女将さんの体調の変化で、料理の味付けが毎日少しずつ変わるから、飽きないらしいんですよ。

一流店で腕をふるう女性シェフも勿論いるだろうし、常に同じ味を提供するレストランが好きという方もいます。

ただ僕は、前述の話を聞いて、なるほどなぁと納得した訳です。


本作は、先日鑑賞した「此の岸のこと」の外山文治監督による短編です。




主人公である女子高生の山野葵は、父親が営む寿司屋を継ごうと決意する。
父親は心の病が原因で、しばらく店を閉めていた。
母親は離婚して、別の男性と再婚している。
進学を控えた葵の気持ちは揺れ動く。

「わさびちゃん…山に葵で、わさびちゃんだろ?」
そんな頃、かつて葵が所属していた野球チームの監督と再会する。





葵が進路面談で話していました。
「女性の寿司職人が少ないのは、女性は基礎体温が高いし、味覚も変わるし、寿司を握るとネタの鮮度が落ちちゃうんだって」

そんな理由でなの…?
でも調べてみると、それは初心者だったり、個人差の問題で、どちらかと言うと、もともとが寿司職人って女人禁制の世界だから、少ないのだそうですよ。
最近ではそういった環境も改善されていて、女性の職人さんもいらっしゃるようです。


「アンパンマンって、全部食べられたら何が残るんだろ?」
「さぁ…愛と勇気だけになるんじゃないっすか?」
結構ウケました🤣




葵を演じたのは、芳根京子さん。
やっぱり存在感ありますね。
複雑な心境の変化や揺れ動きを、しっかりと表現しています。

ただいま。待ってた?

なんてことない台詞なのに、葵の後ろ姿は少し涙声に震えてました。
このシーンが大好きです。

監督を演じたのが、下條アトムさん。
僕てっきり声優さんだと思ってたんですけど、元々は俳優さんだったんですね。
エディ・マーフィと言ったら、この方か富山敬さんですよね。

葵の父親を、杉本凌士さん。
喜怒哀楽を失った空虚感を表現するのは、簡単なことではなかったと思います。

葵の母親を、富田靖子さん。
こういうキャラクターでも嫌味なく演じられるのはお見事。


舞台となる飛騨高山の風景、微かに散らつく粉雪が、とても良い演出になっています。



早く戻ってきてね。
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