やまもり

わさびのやまもりのネタバレレビュー・内容・結末

わさび(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

こちらは内容云々も勿論でしたが、
それ以上に役者さんの力量に圧倒される作品。

終始台詞の無い1作品目とは変わって、きちんと台詞がありますが
台本に書かれている台詞よりも、台本に直接書かれていないであろう登場人物が「飲み込んだ言葉」の方が実は多かったのでは?と感じます。

今、この人は何かを言おうとした、でも言えなかった。

それを目の動き、唇の震え、瞬きなど細かな表現力で示す。

「伝える」よりも「伝わる」方が難しいと教わった事がありますが、芳根京子ちゃんの演技は間違いなく「伝わる」演技。
本当に凄いです。

あんなに若いのに、まだまだやりたい事は沢山あるのにその気持ちを閉じ込めなきゃいけない主人公。

鬱を患った父親への理解を示してはいるけど、一方で
父親の「何時に帰るんだ?」という質問をはぐらかして道草したり、進路についての担任との面談ではほとんど目を合わせないなど
現実と向き合い切れていない様子も見て取れます。

辛い現実を脈絡無く瞬時に変えてくれる「魔法」を信じていたいけれど、向き合うべき「現実」がすぐそこにある事にも気付いている
子どもと大人の丁度中間の女の子。

魔法のボールを打ったあのシーンは
自ら現実と向き合う選択をした、意志の表れだったんだな…。

そんな娘の成長を父親も間違いなく感じていて、彼もまた未来に進む為に「入院」という選択をしたのだろう、と…。

鬱患者が身の回りの環境を大きく変えるのは物凄く勇気のいるしんどい事だと思います。
入院して病気が良くなるのならすぐに入院していれば良かったのに、恐らく長いことその選択をしていなかった。出来ない理由があった。

でも、最後に入院すると言ったのは娘に励まされたから。娘の為を想ったから。

きっとそれは娘にも伝わっていたのだと思いますが、
最後の最後に溢れた涙が彼女の本当の気持ちで…。
「早く帰ってきてね」子どもの立場の素直な気持ち。

「わさび」は間違いなく、親子の絆を深める人生のアクセントだったんだな…。

とても繊細で胸が痛いけど、物凄く優しい作品でした。