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わさびのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

わさび(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

寿司屋の娘の主人公は、心の病で寿司を握れなくなった父親のために、高校卒業を機に寿司屋を継ぐことを決める。しかし、離婚して再婚したヒロインの母や高校教師は「女の子にはムリ」と消極的な反対意見を出し、またヒロイン自身も先の見えない将来に不安を抱えていた。帰り道、ふと立ち寄ったバッティングセンターで、ヒロインは小学生時代に所属していた少年野球チームの監督と再会する。かつて魔球のようなカーブを投げていた監督に、彼女は1打席のバッティング勝負を挑むのだが…という話。

外山文治監督の短編を集めたDVDの中の一編。病気の父親と二人暮らしで、どこか自分の将来を冷めた目で見ているヒロインの葛藤や不安を、雪のちらつく街並みの中で静かに描いていた。あらすじを読んだだけの先入観だと寿司屋、女子高生、野球とミスマッチな題材なこともあり、とっちらかったストーリーを予想していたが、割とスムーズに各エピソードを30分の短い上映時間内に上手くまとめていた。父親と娘のやりとり自然でしかもお互いへの愛情が何気ない台詞の中に含まれていた。
主演は芳根京子で、本当にどんな役でも達者にこなす印象。最後の「早く帰って来て」と言って泣く演技は、気丈に振る舞いつつも実は弱いヒロインの心情を表していて、こちらももらい泣きしてしまった。

劇中で「アンパンマンて顔全部食べられたらどうなるんだろう?」問いに「愛と勇気だけが残るんじゃねえ?」と答えるのは面白かった。
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