春なれやの作品情報・感想・評価 - 4ページ目

春なれや2016年製作の映画)

上映日:2017年08月26日

製作国:

上映時間:20分

3.6

あらすじ

櫻の花が咲く季節、ひとりの老いた女性が警察に保護された。  身元不明のその女性には、どうしても行きたい場所があるという。 「ソメイヨシノは60年咲くことができない——?」 そんな噂の真偽を確かめるべく、既に廃校となったかつての学び舎へと向かう女性と、彼女を案内することになってしまった青年。 春の日に永遠とは何かを問う、ささやかなお話。

「春なれや」に投稿された感想・評価

ゆっけ

ゆっけの感想・評価

4.5
『映画監督外山文治短編集』8/26より渋谷ユーロスペースで上映。

『わさび』『春なれや』『此の岸のこと』
短編3作品が上映されます。

こちら、自分昨年より追っかけて取材等させてもらってますが、ぜひ映画好きに観て欲しい作品です。(その理由を少し以下にまとめます)

①キャストが超豪華!

『わさび』朝ドラヒロインとして国民的女優になる前の芳根京子が主演。

『春なれや』は、日本を代表する名女優、吉行和子と、若手で今映画界引っ張りだこの俳優・村上虹郎。『恋人たち』で「日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞した篠原篤も共演。

監督の先見性の良さがキャスティングからわかります。みなさん、多くを語らない、自然な演技で見ていて本当に心地いい。芳根京子、村上虹郎ファンならまず必見です。村上虹郎くんの自転車二人乗りが見られますよ。”マジっす”(あと、吉行さんの可愛くて萌えますw)

②音楽が素晴らしい

監督は、映画を作った後に曲を載せるのではなく、まだ撮影していない段階のロケハン段階から撮影場所の写真や、役者のリハーサルに音楽家にも参加させて、曲を作っていく方法を取っています。

だからこそ、作曲家が映像よりもいい音楽を作ろうと妥協しない、思いもしない良いものが出来上がる。多様な価値観やその人の技術や才能を認め合うからこそ、出来上がる奇跡のような映画だと思います。面白いです。

そのあたりについては、以下取材記事へ。
→何気なく耳にしている映画音楽、どう作られている?「音楽家との出会いはヒロイン選びと同じくらい大切」
https://filmaga.filmarks.com/articles/1414/

③主題歌がなんと!アーティストCoccoが提供

『春なれや』の主題歌「Time」という曲です。
Coccoの力強さと優しさが映画と非常にマッチしています。

④とにかく、綺麗な映像と心の琴線に触れる繊細なストーリー

良い意味で日本映画らしさがある、とても繊細な映画です。「わさび」「さくら」どちらも日本的なものですが、少しツーンとする悲しさ(苦味)や、すぐに散ってしまう儚さを効果的に、わざとらしくなく描いています。

海外でも高く評価されたそうですが、日本人が観たら、日本の良さや日本人の良さが感じられる、心が温かくなる優しい映画だと思うかと思います。

⑤実は3番目の『此の岸のこと』が一番心に残る、、、

あまり、言いません。ちょっと前の2作品と比べてみると衝撃を受けるかもしれません。テイストが違うというか、台詞が全くないので。不思議な気持ちがする映画ですが、なぜだかひきつけられる、後をひくような映画です。

⑥なんとこれが、自主制作。外山監督の人望と力量

製作、配給、宣伝も全て監督ひとり(脚本も)
そして、

映画は、どうしても昔からの配給会社や興行会社が経営する映画館が強いかもしれませんが、
これからの映画って、もっと業界以外の人も応援できる仕組みが必要なんじゃないかと思います。

映画が好きで、映画愛を持っている人が、もっと良い作品を作るクリエイターの人を応援して、さらに映画を愛する人を増やす循環。

どんなに小さなことでも自分が好きな映画の製作に携わったり、周りの人にその良さを知って欲しくて宣伝したりして、その映画と「つながり」ができるとなんだか嬉しい気持ちになります。

業界に「一矢報いる」ことをした監督に拍手。

→「今まで光が当たらなかった人にも希望を」『春なれや』外山文治監督インタビュー
https://filmaga.filmarks.com/articles/816
春なれや
8/26公開「映画監督外山文治短編作品集」の一作ですが、一足早くレビュー。

熊本県 菊池市
「ソメイヨシノは60年咲くことができない」という説の真偽を確かめるべく、かつて交わした約束を果たそうと老人ホームから一人の女性(吉行和子)が姿を消す。
警察(篠原篤)に身元不明として保護されるも、偶然居合わせた青年(村上虹郎)を案内人として連れ出し 約束の地である廃校を目指すことになるのだが…。
老女と青年の交流を通し、心の在り方次第で『希望』はいつだって見出せることを描いた作品だ。

美しくも恐ろしく 不安だけど心地良い
そんな作品であった
それは捉え方 受け取り方次第で、どちらにでも転じる可能性を秘めていたからだと思う

年老いた女性の視点を通すのと これから数多くのことを知っていく青年の視点を通すのとでは、見えてくるモノが異なる
そんな二人が共に歩むから それぞれの想いが調和していくから、たくさんのモノを感じられる。

知らないでいる内が
得られないでいる内が
程良い距離感を保っていられる内が
最も心が潤っている時なのかもしれない
もちろんゴールには辿り着きたい
成果も得たい
が、達してしまえば最後 また新しい何かを探し求める必要がある。

好物だからといって食べ過ぎると飽きてしまう
好きな場所だからといって通い続けていると、当たり前の場所と化していく
お気に入りの服だからといってヘビロテしていると、スグに傷んでしまう
好きな曲だからといって目覚ましのアラームにしてしまうと、いつしか目覚めの不快な音楽に聴こえてくる
好きな映画だからと何十回も観ていると、構造を把握し過ぎて初見時の感動が薄れていく
好きなAV女優だからといって同じ作品の同じシーンばかり見ているとイケなくなる

どんな形にせよ、手にしてしまった途端 対象物の在り方は大きく変わる
宿していたはずの特異性も徐々に失われていく。

劇中に映る美しい桜もそう
その美しさが示されてしまった以上、後は散っていくのみ
美しいということは儚いということ
目に見えるモノは何だってそう
大事なモノから消えていく

何かを手にするということは、同時に何かを失うということ
約束を果たすということは、約束を通して築かれてきた日々の真価が問われるということ

知らないでいられたからこそ得られた衝動
維持できたモチベーション
それらを欠いてしまった時、それまでのようには生きられない
変化を受け入れなければ前へ進めない

あらゆる価値観を 多様性を受け入れる
凝り固まった思考や習性から脱することは容易ではないが、手放す勇気 受け入れる覚悟を手にすることさえできれば 自ずと道は切り開く。

数少ない言葉のやり取りの中に、二人は光を見出していく
光と言ったら大袈裟だけど、可能性のカケラを手にしていく
目には見えない確かなモノを心に宿し始める
その有り様を目の当たりにし、観客の心にも微かな変化が訪れる
二人の姿はそのキッカケを与えてくれる。

美しい桜並木を通り廃校を目指すほんの僅かな道のりであったが、ぼくにはソメイヨシノを探し求めて旅する二人のロードムービーに感じられた
2人乗りする自転車のシーンが、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のバイクシーンと重なった。

たった20分の上映時間
中身が伴っていれば時間なんて関係ない
短編映画の可能性は未知数だ!

ぜひ劇場でご覧ください。

青春★★★
恋 ★
エロ★
サスペンス★★
ファンタジー★★★
総合評価:B
映画全体を包み込む桜の花びらが心に残る珠玉の短編映画。
20分の短いストーリーは、ポエムのようで、俳句のようで、多くを語り過ぎてなくて、それがいつまでも忘れられない余韻を生んでいました。

吉行和子と村上虹郎のペアが魅力的で、二人が並んで歩く姿はとても自然なものとして存在し、どことなく恋人のように見えなくもない不思議さがあります。

なんといっても自転車の二人乗りをするシーンがチャーミング。
二人乗りのシーンはこれまでも色んな映画で描かれてますが、たぶんこれは映画史上もっとも年齢差がある自転車の二人乗りでしょう。桜の花びらの中で微笑む少年と老女が、とても叙情的でした。

だけどそれは、人生の光と影を抱えている主人公の葛藤があってこそ。
ただ楽しいだけじゃない日々、その中で運命に逆らいたい想いと願い。
それがこの映画の核だと思います。
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