あしたか

映画ドラえもん 新のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜のあしたかのレビュー・感想・評価

4.4
[あらすじ]
のび太が組み立てた巨大ロボットは、地球征服を企む惑星から送られてきた破壊兵器だった。侵略者と戦って地球を守れるのは、ドラえもんと仲間たちしかいない!(Netflixより)

号泣。
新要素が全て良い方向に働いている。


傑作『鉄人兵団』のリメイク版。
オリジナル版からの変更点は、ザンタクロスの人工知能がよく喋るヒヨコ型ロボット・ピッポになっていることと、その反動(?)でミクロスの存在がほとんど無いものにされていること、くらいだろうか。
メインストーリーに大きな変更は無し。

これにより、オリジナル版では存在感の薄かったのび太にも「ピッポと絆を育む」という役割が与えられ、重大性が増している。
ただでさえオチが涙を誘う感動的な作品だったのに、ゲストヒロイン・リルルという元々あった感動要素の他に、更にピッポとのび太の絆までもが見せ場を作るのだから、出る涙の量が2倍になってしまった。いや、終盤のザンタクロスの獅子奮迅たるアクションシーンの興奮を考慮すると2倍ではきかないかもしれない。

ドラえもんの映画はゲストキャラクターとは笑顔でサヨナラバイバイエンドになるのが基本だが、本作は全く違うし、そこが最大の泣き所だ。勿論これ以上はネタバレになるので語らない。

故郷・メカトピアの命令には従わないといけないが、人間の素晴らしさに気付いたゆえにのび太たちのことは守りたい、という葛藤に苦しむリルル。そのリルルがメカトピアの総司令官を説得するシーンは最初の落涙ポイントだ。リルルを演じる沢城みゆきの素晴らしい演技力が存分に発揮されている。

「侵略者が人間の素晴らしさに気付き、迷い始める」というプロットのSF作品は昔から多々あるが、ドラえもんがそれをやるとこんな風になるというのが面白い。飽くまで子供目線の物語ゆえに、説得力が寧ろ増している気さえする。

終盤の、のび太達がメカトピア軍と壮絶なる戦いを繰り広げる裏で、並行してしずかちゃん・リルルペアが世界を救わんと行動するという構図は素晴らしい。
派手な戦闘シーンが物凄く盛り上がるのは勿論、裏側で展開されるリルルの言動がこの上なく感動的だ。リルルの「素晴らしいと思わない?本当の天国をつくる手伝いができるなんて」という名台詞以降からエンドロールが終わるまでは、もうずっと涙と鼻水が止まらないくらい泣ける。
新要素・ピッポのおかげで(オリジナル版では置物に過ぎなかった)ザンタクロスの戦闘シーンが絶大な意味を持つようになった事もまた号泣ポイントだ。ザンタクロス(=ピッポ)がボロボロになり、片腕を失いながらも敵ロボット軍団と戦い抜く姿を涙無しで見られる人間がいるのだろうか?

エンドロールのBUMP OF CHICKENの主題歌「友達の唄」も完璧にマッチしているとしか言い様がなく、凄まじい余韻を残す。映画を見た後はこの曲を聴くだけで涙が出そうになる。

オリジナル版を好きな人でも抵抗なく見られるような改変だし、寧ろ熱が入ってより感動できると思う。
逆に普段ドラえもんやアニメ映画を見ないという人にもこれだけは無理やり見せたいと思うくらいによく出来ている。

涙するのは間違いないし、人によっては魂が慟哭するレベルかもしれない。それくらいのパワーに溢れた傑作。ドラえもん映画、全くもって侮れない。
あしたか

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