軋轢とーふ

修道士は沈黙するの軋轢とーふのレビュー・感想・評価

修道士は沈黙する(2016年製作の映画)
3.5
劇中の修道士はどんな告解・相談・質問をされても常に沈黙を貫いていた。
たまに口を開くことはあったが、何となくそれっぽいことを意味ありげに語るだけで、明示的な回答を避けていた。
(……もしかしたらちゃんと意味のあることを語っていたのかもしれないが、私には難し過ぎて分からなかった)

そんな彼の姿勢を見て、現実のカウンセリングや初期の人工知能ELIZAを思い出した。
カウンセラーやELIZAは相談相手に解決策を明示することはない。(あえて悪い言い方をすると)ただ相手の言葉をオウム返ししたり、それっぽい言葉を返したりするだけだ。
それだけなのに相談者は何か新しいことに気付き、結果的に自力で問題を解決する。

この映画の修道士も同じだ。修道士は何も語らない。ただ相談者達の思考を促すだけだ。
それだけなのに相談者達は何かに気付き、そして問題を解決すべく決断を下した。

カウンセラーも人工知能も修道士も神も、誰も解決策・答えを教えてくれない。
結局のところ、自分の抱える問題は自分で解決するしかないのだろう。
その問題が日常の些細な悩みでも、将来への不安でも、世界経済の抱える課題でも。
「答えはない」、これこそが答えなのかもしれない。
軋轢とーふ

軋轢とーふ