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修道士は沈黙するのayellowbirdのレビュー・感想・評価

修道士は沈黙する(2016年製作の映画)
3.7
ロベルト・アンド監督が、世界経済を牛耳る大物政治家たちの集まりに招かれた清貧な修道士が思わぬ事件に巻き込まれていく様子を描いた社会派ミステリー。昨年4月の“イタリア映画祭2017”では“告解”のタイトルで上映された。
ドイツのリゾート地ハイリゲンダムでG8財務相会議が開かれる前夜。IMF専務理事のロシェは、各国財務相の他に、ロックスター、絵本作家、修道士という3人の異色ゲストを招いて自身の誕生日祝いを開催する。会食後、イタリア人修道士サルスはロシェから告解を受けるが、その翌朝、ビニール袋を被ったロシェの死体が発見される…。
人間は何と欲深い生き物なのか? 物語は自殺か他殺かという謎解きミステリーの形で進行するが、本作のテーマは “謎解き”ではなく、自己の利益のためには他人のことは一顧だにしない、現代社会(金融資本主義)に対する痛烈な問題提起である。参加国の利益のためだけに秘密会議を開催し、その内容が洩れることを何よりも恐れる各国財務相と、殺人の疑いをかけられても、教義ゆえに告解で語られたことを決して語らないサルス神父。同じ沈黙でも、その意味合いはまったく異なる。
某国財務相の愛犬が、飼い主の元を去るシーンが、何とも象徴的に描かれていた。
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