Kaoru

愛のために戦地へのKaoruのレビュー・感想・評価

愛のために戦地へ(2016年製作の映画)
4.4
イタリア映画祭にて鑑賞

イタリアでは大人気のピフ(ピエルフランチェスコだからピフ)は、バラエティ番組出身の優れたコメディアン。彼が監督、そして主演を務める第2作目が、これ。

余談だけれど、ピフはホントに良くしゃべる笑。舞台あいさつでは閉館時間まで熱心に様々なお話をしてくださいました。喜劇的な役とは裏腹に、本当のお姿はとても真面目で教養も深い。いつまでもお話を聞いていたいと思ったわ。

主人公と恋人の名前はアルトゥーロとフローラ。前作『マフィアは夏にしか殺らない』の主人公と恋人の名前とまったく同じなのです。背景となるシチリアという舞台、そしてマフィアを物語った作品という共通点はあるものの、時代背景が違う。前作とまったく違うストーリーだけれど、おなじ名前にすることで前作を再見したくもなる仕組みもステキ。

背景となった1943年は、イタリアにとって、ものすんごく不安定、かつ困難な年。なぜってムッソリーニは逮捕され、イタリアはドイツを裏切り連合国側につくという中で、忠義が崩れて国民が迷い出す、そんな年だったからなの。
ピフのすごいところは、死や戦争という重いテーマを戯曲的に描いてしまうところ。イタリアの古典的喜劇を現代で表現できる監督として尊敬せずにいられないわ。

戦争はいやよね。
作中にも出てくるけれど、政治家は守ってくれない、信仰も救ってくれない、信じていたものが次々へと崩壊していくのだから。

そんな不安定な中で、脈々とマフィアが政治家と癒着しはじめるんだからたまらない。
なぜゴットファーザーはシチリアじゃなきゃダメだったのか、その答えがこの作品にあるわ。

ピフ監督、もうマフィアものはこれで終わりなのですって。次は東京を舞台にした作品を作りたいのだとか。楽しみだわ♡
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