Kaoru

はじまりの街のKaoruのレビュー・感想・評価

はじまりの街(2016年製作の映画)
3.8
イタリア映画祭にて鑑賞

ガン泣きしてしまった。
一貫して暴力、それも家庭内暴力がテーマなのだけれど、なにがすごいって、暴力の描写なんて一瞬でしかないのに、その行為がいかに残忍でたくさんの人の人生をダメにするかを描いているところだと思う。

ローマからトリノに逃げた母親と息子、母親のストーリーと息子のストーリーを同時に描いていて、それを取り巻く人々の物語もあり、社会ってのは何も自分だけが不合理・不条理な目に遭っているわけではないということも思い知らせてくれる。

悪いけれど誰だって、辛いことや、もうダメだと思うことなんて生きてりゃ必ずあるワケで、そういう時に安全基地になるのが家族だったりするでしょう。それなのにDVってのは、その避難場所をも奪ってしまう。特に息子ヴァレリオ君(子供なのにめちゃイケメン!)の心がどんどん閉じていく様が痛くて痛くて仕方なかった。

だけれども、この作品はものすごく希望も見せていて、居場所のない心の隙間を持った人たちを、友達だったり近所のおっちゃんだったり、そういう血の繋がってない人が実は救えたりもする。キーマンはカルラね。こんな友達を人生1人でも、特にこの日本で持つことってできるのでしょうか。本当に素敵な友達。

トリノ人は内向的で、人見知りが多い。移民が多く集まるローマと違って、よそ者にはとても冷たい、アタシはこの街にそんな印象を持っているけれど、この作品を見て思うのは、やっぱり全ては自分次第なのかもしれない、と。

この親子みたいに、多くは語らない、だけれども本当のところ壊れそうな思いを抱いている人がもしかしたら自分の近くにもいるのかもしれない、と感じさせる作品だったわ。
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