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はじまりの街の小のレビュー・感想・評価

はじまりの街(2016年製作の映画)
3.6
退屈そうな映画だと思ったのでスルーするつもりだったけれど、「午前十時の映画祭」と岩波ホールでかかる映画はやっぱり見ようと思い直し鑑賞。

夫の家庭内暴力から逃れるため12歳の息子バレリオと2人、ローマから親友の住むトリノへ移り住むアンナ。見知らぬ土地で不安や辛いこともアリながらも、一生懸命頑張っていれば道は開けていく、と。

トラブルがあったり、感情が高ぶったりする時もあるけれど、それ程劇的ではなく、ギリギリ日常の範囲内という感じ。すれ違う親子関係の結末もあっさりめ。物語のメッセージはというと、人生はやり直すことができる、人生は素晴らしい、ということのようだ。

男尊女卑で知られるイタリアの映画であることに点に着目すると、自立する女性像という、イタリア女性の願望や憧れを描いたのかもしれない。

彼の国では女性は男性と肩を並べて働く存在ではないという価値観で仕事に就くのが難しいらしいけれど、そんな中でも決してめげることなく、清掃員として夜遅くまで働くアンナ。

不安と寂しさから、理不尽な境遇に追いやったアンナを責めるバレリオだけれど、芯は優しく、アンナのことも理解している、とっても良い子で、おまけにイケメン。

舞台のトリノの街は、何気ない日常の風景すら芸術的。こんな美しいところで、男に頼らず、親友や良い息子に囲まれつつ健気に頑張るアンナの姿を見て、イタリア女性は「こんな生き方もいいかも」と思うのかもしれない。

一方、元男の子であるオジサン的には、バレリオの立場だったとしたら、彼のように母親を受け止められるかわからない。そもそもバレリオを支えてくれたのはビストロオーナーのオジサンで、「お母さん、何もしてくれなかったじゃない」と思っても不思議はない気がする。

もっとも、本作は女性の願望を描いた物語というのが私の見方なので、母にとっての理想の息子像を描いたのかもしれない。ということで、イタリアの女性が癒される映画なのかな。日本の女性にはどう見えるのだろう?

●物語(50%×3.0):1.50
・基本は良い話だけれど、劇的な要素がほとんどないストーリー。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・イケメンの息子が結構頑張っていた。大女優らしいお母さんは意志の強さが良く出ていた感じ。

●画、音、音楽(20%×5.0):1.00
・映像、音楽、あまり覚えていない系の自分でもこれは美しいと記憶に残るトリノの街の風景。
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