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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスのNAOKIのレビュー・感想・評価

3.9
皆さんは絵に自信はありますか?
日本ではよく、芸能人の人でちょっととんでもない絵を描く人を「画伯」とか言って笑い者にするような傾向がありますよね💦
はたして本当の絵がみんなには見えてるのだろうか?

おれは小さいときから絵を描くのが好きで…子供のころ「自分は絵が上手い」と思い込んでいました。

小学校高学年のころの美術の授業で絵を描く…テーマは「未来の世界」…
SF映画やアニメが大好きだったおれは張り切って…
どこかの惑星で岩石を収集する四足歩行ロボットの絵を描いたのです…

もう男の子達から口々に「かっこいい」と大絶賛…おれはすっかり舞い上がって天狗になっていました。

授業の終わり…担任の先生の総評…先生はおれの絵をみんなに見せてこう言った。
「とっても上手に描けてる…文句なしに上手い!だけど今日先生が一番気に入ったのはこの絵です。」
先生は沼田君の絵を皆に見せたのでした。

この映画…邦題は
「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」
配給会社が何とかバカなおれに内容を伝えようとしてくれてるのはよく分かります…でもバカなおれはこんな長いタイトル覚えられない!

原題は「モーディ」
コミュニケーションの苦手な彼女は人と会った時、取り敢えず自分の名前を言う…
「私はモード…モード・ルイスよ」
「モーディ」は愛称かな?これでいいんじゃないかな😁💦…

タイトルはさておきこの映画…辛気くさくてちっとも面白くない!対人が苦手な「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリ―・ホーキンスと「ヴァレリアン」でなにやってたんですか?のイーサン・ホーク…

サリ―は何か障害を持ってるか健康上に問題を抱えているようにも見える…でも詳しい説明はない…
「歩き方がヘンなだけ」
で済ます…つまりどうでもいいのだ…彼女に障害があるなら…「彼女は犬以下」だと言い放つエベレットや叔母さんや兄貴の方がよっぽど障害を抱えているようなもんだ。

そう…おれたちはみんな多かれ少なかれ障害(みたいなもの)を抱えていて…それでも何とか生きていくしかないのだ。

この辛気くさい物語にいつしか心をわしづかみにされてる。

この手の映画はプレデターや巨大鮫や銃撃戦とは違う形でおれを打ちのめす…

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」や「ムーンライト」と同じ…こういう映画に出会うと映画ファンで良かったと心から思える…
おれにとっての「大切な映画」がまた1本増えました。


美術の授業で沼田くんが描いた絵は…お世辞にも上手いとは言えない絵で…
それは大きな船の絵だった…リアルでも何でもない船の輪郭の断面図みたいな船内は細かく部屋に区切られていた。
先生は言った…
「これはノアの方舟みたいな船かな?このひとつひとつの部屋…これなんかこたつがあってミカンが置いてある!…この部屋では皆が卓球してる!楽しいなぁ!」
人なんか○に線で手足を着けただけみたいな絵で…先生が説明する度に皆がどっと笑う。

それは絵が下手だからではなく楽しいから笑ってるのだ。沼田くんは絵の技術なんか関係なく「自分が描きたい絵」を描いて皆の心を掴んだ。

おれはショックだったけど…そのとき素直に絵というものを理解できた気がしたんだ。
おれも自分の好きな絵を描いたつもりだったけど…それ以上に皆に「上手い!」と誉められたくてその絵を描いたことに気付いたからだ。

それからおれは人がどう思おうが自分が描きたい絵だけを自分が描きたいように描くようになった。
先生と沼田くんには感謝している。あの愉快なノアの方舟の絵に完敗しなければ、今でもおれはつまらない絵を描き続けていたかもしれない。

モードはエベレットに部屋を綺麗にしろと言われて壁に自分の描きたい絵を描いたのだ。

目をつぶって殺した鶏が「幸せだった頃」の絵…
おれは笑いながら泣きました。

金のためでも人に誉められたくてでもない…ただ描きたくて描く必要があったから描いた…だから技術なんかに関係なく人の心を打つのです。

DVD特典にモードの絵が12点ギャラリーに入ってた。
全部写メ撮ったよ!
特に「日曜日のおでかけ」ってタイトルの車で出掛けるモードとエベレットの絵が素晴らしくて…
今…おれのスマホの待受です😁💦
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