わたふぁ

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスのわたふぁのレビュー・感想・評価

-
若年性リウマチで手足が不自由ながら、とにかく絵を描くことを愛した女性画家モード・ルイスの実話を基にした物語。

モードは、自分を虐げ続ける叔母の家から出て、住み込みで家政婦として働ける家を探した。そして人里離れた土地で魚の行商を営む男エベレットにしぶしぶ雇われる。布団もないところに寝かされ、番犬や家畜よりも下の立場だと言われ、毎日のように「出てけ」と怒鳴られるモード。
しかし彼女は、彼の家の壁や窓や廃材に絵を描き始める。理由は「あなたが家を綺麗にしろと言ったから」。いつもモードの頭の中はシンプルだ。
そんな無垢な性格がそのまま現れた絵だから、今なお多くの人々に愛されて止まないのだろう。

モードはきっと、ど田舎にある汚くて電気も通っていない家だから「自由に描いたって良い」と考えたのではなく、ニューヨークの一等地にある高層マンションの壁にだって好きな絵を描きまくったと思う。TPOなどという言葉は彼女の辞書にはきっと無い。
彼女の絵は“素朴派” フォークアートとも呼ばれるけれど、その名の通り、なんだかロックな生き様だった。

一軒の家と、一本の帰り道と、一人の大切な人がいれば、本当はそれだけで十分日々は愛しいものなんだよな、としみじみ泣ける良い映画でした。