LalaーMukuーMerry

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.7
とても美しいお話でした。心の温まるお話でした、音楽も。よかった~!
          *
時代は1930年代後半から、舞台はカナダ東部ノバスコシア州ディグビー(「赤毛のアン」のプリンス・エドワード島の近くですね)、波静かな入り江の小さな町、美しい風景に囲まれたこの地で一生を過ごした女性画家モード・ルイスの(30才過ぎからの)半生を描いた物語。
          *
画家と言っても絵を学んだことはない。描くのが好きだから好きなように描いただけの、原色を使ったカラフルでヘタウマ系の素朴な絵。しあわせが伝わってくるような絵の題材は身のまわりの花、植物、動物、人。四季のある自然、時に厳しいからこそ、その優しさと美しさと恵みを彼女は感じとっていたのでしょう。
          *
子供の時にリュウマチを患ったせいで手足がやや不自由で、体も小さく、家の中で一人で遊んで子供時代を過ごした彼女。
          *
       *** ***
          *
わしの名はエベレット。今日はつれあいのモーディの話をしておこう。わしがまだ若い頃のこと、魚売りと薪売りの仕事の他に、(わしは孤児院育ちだから)孤児院の雑用もさせてもらって細々とくらしていたのだが、貧乏暇なしで家事のことをする暇がない、家政婦が必要と、町の店の掲示板に求人の紙を貼らせてもらった。貧しい家だから、期待はしてなかったのだが・・・
          *
ある朝、女が訪ねてきた。小さくて、歩き方がおかしい風変わりな女だ、名前はモーディ。その場では決めかねて一旦帰ってもらうことにしたが、孤児院の先生に家政婦はいた方がいいと強く勧められて、わしは彼女を試しに雇うことにした。
          *
彼女の家に迎えに行き、トラックの荷台に乗せてうちに連れてきた。住み込みで働くから部屋と食事と週給25セント欲しいと言う。
「・・・」
「何をしたらいい?」
「言わなきゃできないのか?」
わしは仕事に出かけ、夕暮れ過ぎに家に帰ってきた。すると家は掃除もされてなく、テーブルも片付いてなく、スープは作ってあったがわしの嫌いなカブのスープだった。
「掃除もしない女は雇えない、出てけ!」
わしは彼女を叱りつけて追いだした。(あの足で夜道を帰っていけたのだろうか?)気になってその晩わしはなかなか寝付けなかった。
          *
翌朝、起きてみると驚いたことに、モーディが床のふき掃除をしていた。わしは黙ってすぐ仕事に出かけた。日暮れ前に帰ってきたら、ちょっと家がきれいになっていて壁の小物入れがペンキで色付けしてあった。夕食はチキンの肉入りシチューで結構うまかった。
          *
「今晩どこに寝ればいい?」
ベッドは2階に一つしかなかった。孤児院では一つのベッドで6、7人寝たもんだ。しかたない、二人で寝ることにした(もちろん背中合わせ)。こうしてわしらは一つ屋根の下で暮らし始めることになった。
          *
ある日、仕事仲間のフランクと一緒に薪を家に運んで来た時、家の外にいるモーディに気づいたフランクが、興味津々で彼女に話しかけてきた。
「住み込みのメイドか。夜はどうしてるんだい?」
「仲良く寝てるよね」
と笑いながら答えたモーディ。わしは我慢ならず平手を振るって「家の中に入ってろ!」と怒鳴りつけた・・・
家の中に入ってみると「私が必要ないなら出ていくから、給料を払って!」と泣きながら迫ってきた。わしは仕方なく給金のコインを彼女にわたした。
          *
だが彼女は出ていかず、そのお金で絵の具を買って、家の壁に絵を描き始めた。窓ガラスにも絵・・・、家の中にだんだん絵が増えていった。わしは「そんなことより掃除をしろ」というと、「あなたは家をきれいにしろと言った、だから描いたのよ」と言い返してくる・・・
モーディは絵を描くのが本当に好きだった。
         ***
長くなるから、今日はこれくらいにしておこう。
次は、モーディの過去の秘密の話
その次は、はじめてモーディの絵が売れた時の話
それから、わしらの結婚の話
モーディの絵が有名になり我が家がTVに出た話
年を取ってからわかったモーディの過去の秘密の話の続き。わしは孤児だったから放ってはおけなかった。この話ではモーディのために役にたてたと思う。彼女も喜んでいたしな。
          *
有名になっても彼女はそのままの暮らしを望んだから、わしもそれに従った。おかげで、わしらは幸福で、ほんとにいい夫婦でいられたよ。ありがとうモーディ。