螢

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスの螢のレビュー・感想・評価

3.8
世間の片隅でひっそりと暮らした夫婦の、当初は利害から始まり、いつしか労わりと愛情に変化して寄り添い終えた人生を丁寧に描いた、実話に基づく物語。
「大人の恋愛を描いた作品は本当に少ない。これは過去にない美しいラヴ・ストーリーだ」
DVDの特典映像での、俳優イーサン・ホークの言葉が胸に染みた。

カナダに実在した女性画家モード・ルイスと、その夫エベレットの人生がモチーフになっています。

若年性リュウマチを患って身体に障害を持っていたルイス。彼女は実兄に捨てられるようにしておばの家に厄介になっていた。彼女は自立するために、独り者のエベレットの家の住み込み家政婦となる。
エベレットは、当初は要領の悪いルイスを怒鳴りつけたり殴ったりしていた。
けれど、家族からも虐げられていたけれど強い意志を持つルイスと、孤児院育ちで学もなく貧しく不器用だけど情深いところのあったエベレットは、いつしか心を通わせるようになる。
結婚する二人。
やがて、ルイスの描いた絵が人々の注目を集めて…。

二人の「きっかけ」となった、ある小さなモノをずっと捨てなかったルイスの気持ちと、それにそっと触れるエベレットを写した情感あふれるシーンはとても印象的。

悪態をついてばかりだけれど、実は情が深くて、行動としては結局ルイスにとことん尽くし、尚且つ、周囲の自分たちへの視線や態度が一変しても、何にも誰にも惑わされずに変わらなかったエベレットを演じきったイーサン・ホーク、本当に巧みで、味わい深い。
ルイスを演じたサリー・ホーキンスも、よかった。
エルドロールで本物のお二人の姿を映した映像も、感慨深い。

世間の片隅で生きた夫婦の生活を淡々と静かに描写した作品で、大きな山や谷といった起伏はない作品なのだけど、胸に残った作品。
螢