明石です

オーメン/オーメン666の明石ですのレビュー・感想・評価

オーメン/オーメン666(2006年製作の映画)
3.3
流産により赤ん坊を失った男が、同じ日に病院で生まれた子供を引き取り育てた結果、その子が実は悪魔でしたという話。1976年版オーメンの忠実なリメイク。キャストは豪華になってるけど、オリジナルに比べて特に目新しさはない。ちょっぴり期待外れでした。

ストーリーや死亡シーンは基本的にオリジナルを元にしつつ、そのまま時代設定だけ2006年に置き換えた感じ。ダミアンがXBOXで遊んでるところ私的にけっこうツボでした。三輪車で遊んでるフリして母親を三階から突き落とす名シーンも、三輪車がキックボードに変わってて現代を感じた笑。あとダミアン君が美少年になってるのはけっこう高ポイントかもしれない。

今作はリーヴ・シュレイバーのシリアスな演技が光ってました。この人はお顔からして堅物感あるし、最後は報われない男的哀愁が滲み出て良い。劇中ずっと真面目な顔して真面目なことしか言ってないから、これほどシリアスな人が悪魔の存在を信じ、我が子を殺そうとまで思い詰めたなら、それはよっぽどのことなんだろうなと感情移入できる。私的にはオリジナル版のアティカス(グレゴリー・ペック)より好きです。

乳母兼悪魔の使い役には、我らがウディ・アレン大先生の(元)妻ミア・ファロー。『ローズマリーの赤ちゃん』の頃から宝石みたいに綺麗な人でしたが、お年を召してもなお気品があって美しい。撮影当時すでに還暦を迎えてるはずなのに、この人は80年代から時が止まったみたいに若く見える。また一見人が良さそうだけど、得体の知れない怪しいおばさんって役も意外とハマってた。そして薄幸なところは相変わらず笑。こういう邪悪な役のミアもっと見たかった。。

一方でジェイソン・ボーンの恋人ことジュリア・スタイルズは、今作ではナーバス&ヒステリー気味の嫌われキャラ。序盤は純心な雰囲気に好感が持てたけど、夫が出世したのを機に、成金趣味の豪邸に住み始めたあたりから嫌らしくなっていく。こういう見栄っ張りで中身のない人苦手だなあ(という個人的感情をぶちまけておきます)。ジュリアスタイル自体は好きだけど。

私的にすっごく評価したいのは、2000年代以降のホラーにありがちなジャンプスケアを多用した陳腐なSEホラーに成り下がっていないこと。もちろん効果音もゼロではないですが、要所要所でしか使われておらず、また観客を驚かせることが目的ではなく、単純に絵のインパクトを増大させるための補助的な使われ方だったので好印象。70年代当時の慣習なり技法なりをしっかり踏襲してるのかな。雰囲気で怖がらせる良質なホラーに仕上がってるのは素晴らしい。オリジナルの『オーメン』が好きだったので、そこは高評価です。

今作の唯一にして最大にの残念ポイントは、死亡シーンのクオリティ。オリジナルから全く質が上がってない。というかこちらは人が死ぬシーンがあっさりし過ぎてて、これ本当にリメイクした意味あるの?って思っちゃった。バリュエーション豊富なデスシーンこそ『オーメン』の見どころなはずなのに、そこに力入ってないのはさすがに厳しいと思う。30年前のオリジナル版の方が臨場感あったしずっと怖かったよ。。

特にダミアンが三輪車(今作ではキックボード)でぶつかって母親を突き落とすシーン、あれオリジナルだと、三輪車を漕いでる時点で(というか漕ぎ始める前から)何かが始まるぞと不吉な予感を抱かせ煽ってくる感じが秀逸だったんだけど、今作はサラッと漕いでいって、サラッと落とす。あまりにあっさりし過ぎてて怖さを感じる暇がない。例えるなら前戯を欠いたセ〇クスみたい。あとラストでダミアンを殺そうとした〇〇が撃ち殺されるシーンは、まさかの暗転。死の画面はおろか流血シーンすら見せてくれず、一瞬で葬式の場面までカット。。正直ストーリーはそのままでいいけど、死亡シーンの臨場感はもっと出して欲しかった。なにしろ30年越しのリメイクなので、技術的な面の進化を期待してしまうのは私だけじゃないはず。

総じて言えるのは、オリジナル版が好きな人にとっては特に見る必要のないリメイクって感じでした。好きな俳優が出てるなら見る価値アリですが、そうでないなら基本的にはオリジナルで十分。一応フォローしておくと、同じく悪魔の子を題材にした2000年代のホラー映画『ケース39』の上位互換ではあると思う。でもオリジナルの『オーメン』の方がずっと良作。同じ時間費やすなら、あちらを見た方が666倍有益ですね。
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