ケンヤム

デトロイトのケンヤムのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.8
むき出しの正義は、むき出しの悪と同義語なのだ。
あの警官たちは、自身を完全なる正義だと思い込んでいる。
そこに、差別しているという感覚は微塵もなく、自身の正義を疑うという感覚もない。

彼らは気づいていないのかもしれないが、差別というのは恐怖をエサにして成長する。
「俺らはあいつらにあんなことをして、こんな酷いことをいつもやっているのだから、いつか仕返しに来るに決まっている!」
という自身の中の無意識の恐怖。
銃を向ける人間というのは、向けられる人間よりもビビっているのだ。
狙撃手なんていないのに、彼らはなぜか狙撃手から狙われていると思い込んでいる。
そう感じるのは、日頃自分が後ろめたいことをしているからだ。
黒人から仕事を奪ったり、バスの座席に座らせなかったり、酒場から追い出したり、ニガーって言ってみたりしてるからだ。

あの警備員の黒人が、拷問されている黒人に投げかけた言葉。
「とにかく、今夜を生き抜け」
なんて悲しいセリフなのだろうと思う。
差別され続けた人間からしか出ない悲しい叫びだ。

さっきパンフレントを読んだら、未だに一年に300人の黒人が白人警官に撃ち殺されていると書いてあった。
そのうち、有罪になる白人警官は1パーセント未満。
しっかり、この世界は狂っているのだ。

だから、しっかり怒らなければいけない。
こんな扱い不当だ!
やめてくれ!
殺すな!
わかってもらえないかもしれないし、未だにわかってくれるとは思えないような絶望的な状況だけれど怒らなければいけない。

生活保護費を減らせ。自己責任だろ。
うつ病は甘えだ。
在日韓国朝鮮人は不当に利益を得ている。
あいつ部落出身らしいよ。
女が偉そうに。
こういうこと言う奴らを「スルースキル」とか言って野放ししてきたから、キャスリンビグローはこんな苦しくて辛い映画を撮ってるんだ。
そう言う馬鹿で愚かでクソみたいなことを言ってる人を見たら、ちゃんとその場で怒らないといけないと思った。
お前らこそshithole=肥溜めだろ!

この映画を見て、こんな差別を受けてきた人がいるんだなぁ。かわいそうだなぁと思った。

家に帰って鏡を見たら、自分の肌が黄色かった。
ケンヤム

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