木葉

デトロイトの木葉のレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.1
息が詰まりそうになるくらいの、張り詰めた迫力。
こういう映画にはなかなか出会えない。
鑑賞後は、やるせなさ、動揺がとまらない。
1967年の出来事なのに既視感があるのは、白人による黒人への差別、人種差別による衝突のニュースを今も良く目にし、アメリカ社会の縮図のような気がするからだ。
1967年、実際に起こったデトロイトでの黒人暴動から発展した悲劇。デトロイトといえば自動車産業の町で当時は職を求める黒人が溢れ返るくらい移住していた。白人対黒人の構図は変わらず、白人は自分が白人という自尊心から、黒人を威圧し押さえつける。ある日、ちょっとした黒人の白人警官らへの挑発をきっかけにして、それが白人警官による黒人への暴力、弾圧、ロシアンルーレットのような悪夢のような戦慄の一夜にまで発展してしまう。
緊迫し、恐怖で背筋が凍るような40分間。モーテルという密室空間で起こる死のゲームを、極限状態に追い込まれた人間の内面、表情、行動を全て炙り出し、私たちは、まるでそこに立ち会っているかのような錯覚に陥る。
この映画が素晴らしいのは、白人側、黒人側にも寄らず、限りなく客観的視点で描いているところにある。そして、史実をありのまま再現し、役者陣の切羽詰まった緊張感、ドキュメンタリータッチの描写に拘り、もしも、私たちがその立場になったらという、ど直球に投げかけてくる強いメッセージを観て感じるところだ。
人種差別ほど不条理で理不尽なことはないが、自分の身に起き換えるといつ何時加害者、被害者になるかわからない危険性を孕んでいることを、そして、差別主義が生まれる構造、連帯感の恐ろしさを痛いほど肌で感じる映画だ。
差別、暴力、支配欲、憎しみが渦巻く今だからこそ、この映画を見られる価値は大きい。
心が突き動かされ、重くのしかかり、衝撃を超え怒りで震える映画だった。
木葉

木葉