柏エシディシ

デトロイトの柏エシディシのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
3.0
夢見るような体験をさせてくれるのが映画ならば、決して現実では起きて欲しくない事を疑似体験させてくれるのも映画の重要な役割。しかも、これは現実に在った事で悲しいかな未だに世界中に溢れている事。

そこはキャサリンビグローですから、容赦の無さは覚悟してましたがここまで腑を抉ってくるとは。
件のモーテルの尋問シーンは当然シンドイのですが、個人的には「その後」のディスミュークスの尋問シーンが本当にキツかった。あの話が通じない感、、

デトロイトの街がある意味「華やか」であったモータウン全盛期の1967年。
作品のハードさ以上に音楽映画としても観るべきポイントの多い作品。
劇中言及される急逝したコルトレーンは時代の奔流に抗う様に激しい吹奏を繰り返し命を燃やし尽くしたジャズの巨人。
失意のラリーがすがるように教会の歌唱隊に居場所を求めるのは、モータウンやR&Bの源流にあるゴスペルミュージックへの憧憬か。
そしてエンドロールに鳴り響くビラルが客演したThe rootsの「It ain't fair」
現実が荒み闇が深くなる程、音楽は力強く鳴り響く。僕たちには音楽が必要だ。

「ハートロッカー」「ゼロダークサーティ」もこの世界の巨大さ、底の知れなさに佇むしかない様なハードな作品でしたが、本作の結末には監督の祈りと願い、現実に対するファイティングポーズがある様に思われました。とてつもなくパワフルな作品。
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