グラッデン

デトロイトのグラッデンのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.2
地獄絵図の先にある絶望。

エンドクレジットに至る過程で本作が実話に基づいた出来事であることを再確認させられ、重みが一段と増しました。

それほどまでに、実際の写真や報道映像を交えながら、デトロイトの街の緊張感が終盤まで緩むことなく展開されていたと思います。

キャスリン・ビグロー監督の作品は5年前に公開された『ゼロ・ダーク・サーティ』を劇場で鑑賞しておりましたが、アプローチであったり、作品が醸し出す空気感は共通する部分が多くあったと思います。

一方、本作は特定の人物を中心に描くのではなく、暴動、および本作の舞台となる事件の現場に居合わせた様々な立場の人々の視点にスライドさせることで、暴動の背景と異常さを出来る限り、フラットに伝えようとする意図を強く感じました。

このような描き方から、白人であろうと、アフリカ系アメリカ人であろうと、感情が先行した衝突とその連鎖は何も生み出すことなく、差別の意識がそれを加速させてしまうことを強く感じました。そして、暴動から半世紀経過した現代においても、再度見つめ直さなければいけない視点であると感じました。