菩薩

デトロイトの菩薩のレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
2.8
窮鼠は猫を噛み、飼い犬も主の手を噛み、そんな風にして発生する痛みというものを、人間は幾度と無く経験してきただろうに、そんなものはいつの間にやら忘れてしまって、また傷負って血を流しては、力でもって多くの声を封じていく。強きを助け弱きを挫き、そうやって法治国家は保たれ、蔑ろにされる多くの悲しみがある。正義などと言う物は常に多数派、そして力があるものが握る、勝てば官軍、負ければ賊軍、永久不変の世界の理。人はか弱き生き物だから、自分より劣っている者を見つけては彼らを貶めて、そうやって相対的に自分の立ち位置を維持していくしか術がない。ただそんな事を続けていると、世界は大きく歪み、そしていつの間にやら壊れていく。恐怖が相手に銃を向けさせ、慢心が指をかけさせ、快感が引き金を引かせる、そうしてまた命が不毛に散っていく、いつまで続けるのか、後何人殺すのか。そもそも人は鼠でも無く犬でも無く人なのだから、そんな事すら分からなくなってしまったのであれば、今すぐその手に握った銃を捨てるべきだろう。

ただこの作品、せっかく上手に出汁は取ったのに、煮込みすぎて焦げ付きが酷い、遅々として進まぬ牛歩戦術の如き尋問シーンを延々見せられても、面白さとは違う胸糞が溜まって行く、ただそんな苦々しさを味わう作品なのかもしれないが…。15年前だったら印象も変わったろうに。
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