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デトロイトのyumeayuのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.5
息がつまる…耳を塞ぎたくなる…。
それでも目を逸らさず見なくてはいけない!

トランプ政権発足以降、再三と問題視されている人種問題。そして現在もなお続く警官による黒人への不当な扱いや暴力。
日本に住んでいると、この手の問題を直接感じる機会は少ないかも知れない。
しかし、今作で軍人や別の州の警官達が関わると厄介だと見て見ぬふりをしたように、対岸の火事だとそっぽを向くのは同罪だ。

監督のキャスリン・ビグローは見て見ぬ振りをしなかった。このタイミングで彼女が今作を世に発表したのは決して偶然ではないと思う。決して単なる正義感だけではできないし、かなり勇気のいることだと思う。

しかし、これがアカデミー賞にノミネートすらされない闇。うーん、それって逆に白人至上主義を認めちゃってることになりませんかね。
結局のところ、マイノリティがどれだけ苦しみを叫んでも、圧倒的なマジョリティの前にはなす術がないのか。
デトロイト暴動から50年経っても変わらない現状を改めて思い知る結果になったのは皮肉なものだと感じた…。



物語の舞台は当時アメリカ第五の都市であったデトロイト。理不尽な扱いを受ける黒人達の怒りは頂点に達し、アメリカ史上最大の暴動へ発展していく…。

今作はその混乱の中で、歴史に埋もれていたアルジェ・モーテル事件の一部始終を関係者の証言などを元に再現したもの。

物語は大きく分けて3パートに分かれます。
前半は当時の映像を交えて、デトロイト暴動をドキュメンタリーチックに描く。
中盤はアルジェ・モーテル事件で起きた警官達による黒人達への尋問と言う名の拷問を、後半は事件の裁判の模様を描いている。
物語のラストはこの事件に関わった人達のエピローグが語られるのだが、事件によって人生を狂わされた人達のことを思うと胸が痛む。

そして、映画であることを忘れてしまいそうな、リアルな役者たちの演技が凄まじい。
特にレイシストの白人警官を演じたウィル・ポーターの演技が凄かった。本当にクソムカついた。
あまりにも迫真の演技過ぎて、リアルに反感を買わないか心配になる。

ジョン・ボイエガが演じた元ストームトルーパーの黒人警備員も非常に良かった。
白人警官を刺激しないように、どうにか事を収めようとする役回りで、彼が事件の収束に一役買うのだと思いきや、なんたる仕打ち。あのオチはキツかった…。

正直、彼がこんないい役者だとは思わなかった。
アダム・ドライバーもそうだけど、ファーストオーダーは実力派が多いですね。
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