1967年、デトロイトで起きた大規模な暴動。
混沌としたその世界の片隅で起きた、ある事件の物語。
先日、キング牧師を描いた「グローリー」を観て、同時期の話だったので興味を持ち鑑賞。
公民権法成立から3年。
机上では黒人の人権が認められたものの、人々に根付いた差別感情は、そう簡単に変わらない。
そこには、奴隷制度という何百年もの歴史があるからだ。
そんな中で起きた暴動。
鎮圧に当たるのは、当時95%が白人だったという警官たち。
そして事件は起きる。
監督の手腕と俳優たちの名演が、観客をあの日モーテルにいたもう一人の人物にさせる。
その息苦しいほどの緊迫感。
しかしふと気づく。
自分はどちら側の人間なんだろうと。
実際に起きた事件を基にしているだけに、とても重厚感がある。
しかしあまりにも丁寧になぞりすぎて、映画としての魅力に欠けているように感じた。
もともと脚本は、ドラマティックスのラリー・リードの物語にする予定だったそうだ。
しかし事件を調べるうちに、それが群像劇へと変化していった。
そこにいた人々の思いを込めたかったのだろうが、結果的に掘り下げきれず、事件を描いただけになってしまっている。
歴史の一片として、この作品が多くの人々に届くことはとても意義がある。
ただもう少しどこかに絞って、踏み込んだものにして欲しかったと、個人的には思った。