mrかっちゃん

デトロイトのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.6
アメリカ最大規模の事実上の内戦となってしまった暴動を題材したノンフィクション映画。
ドキュメンタリーと言っても過言ではないほどのリアリティを持った圧倒的な演出で2時間半があっという間に過ぎていきます。
「ハートロッカー」や「ゼロダークサティ」のキャサリンビグロー監督の最新作。

去年でこの暴動から50年経った節目として制作されていますが、今の昔も何も変わらない現在進行形の問題を浮かび上がらせているところが何より恐ろしい。
車産業で有名なデトロイトで勃発した人種間の暴動。

押さえ込まれるように住まわされている黒人らを差別的な暴力で白人警察官が、取り締まっている構図が最初に提示されます。
そこからどのように暴動に繋がっていったのかがじっくりと描かれている。

この作品の軸となっているのは暴動の渦中で行われたもはや虐待レベルのモーテルでの尋問シーン。
人の尊厳など踏みにじられた残虐極まりない暴力。
特にウィルポールター演じる白人警官が人種差別というテーマを一点に引き受けたキャラクターになっています。
役者として素晴らしいと思う一方、
「この警官死んでしまえ」と心の底から嫌悪感を滲ませながら観てしまうほど、作品の中に引き込まれていた。
胃がキリキリするような地獄のシークエンス。

キャサリンビグローが過去作品で培った経験と技術がこれでもかと炸裂しています。
本当に素晴らしい。

黒人に対する差別というのは大昔からある悪しき文化。
誰がどう見てもおかしいと声をあげるべきことなのに発言出来ない空気とこれでいいという風潮が出来上がっていたのだと思う。
いじめのメカニズムと同じ。
誰かがターゲットされたらそれを黙認するか加わるしかない。
反論の声を上げたものが次のターゲットになる。
人間の弱さというか一番共感できない部分が露わにされているのだと思う。

現代社会でも1年間に300人以上の黒人が警官に殺害され、武器を所持していた割合が全体の3割。
警官が有罪になる確率が1パーセントという現状が未だに続いています。
劇中の裁判の判決の結果も照らし合わせてもらうとこの悲惨さがよりわかると思います。
何が問題解決に繋がるのかもはやわからなくなってきているのだと思う。