ヴェルヴェっちょ

デトロイトのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.0
「ハート・ロッカー」の時のように、狂気的な現場に叩き込まれたかのよう。
リアリティの追求では他の追随を許さないキャスリン・ビグロー監督が、デトロイトで実際に起きた事件を映画化。

第一次世界大戦前の「黒人の大移動」により、600万人ものアフリカ系アメリカ人が南部の綿畑を離れ、仕事と人権を求めて北部に移住した。
第二次世界大戦後、白人は郊外に移住し、都市部の人種隔離区域から金と仕事が消えた。
デトロイトでは、黒人が人口過密な居住区に住まわされ、暴力的な白人警官が監視。1960年代、人種間の緊張は臨界点に達していた。

そして1967年7月、デトロイトで暴動が発生。 その2日目の夜、街が戦場と化すなか、ミシガン州兵隊の集結地付近で銃声の通報がある。
捜索押収のため、デトロイト市警、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊がアルジェ・モーテルの別館に乗り込む。捜査手順を無視した何人かのデトロイト市警がモーテルの宿泊客たちに不当な強制尋問を行い、誰彼構わず脅迫し自白を強要する“死のゲーム”が始まる…。

飛び交う怒号。理不尽な暴力。荒々しいカメラワーク。においまで感じられそうな画面。これだ。この世界観はキャスリン・ビグロー監督の独擅場だ。

「正義」を笠に着た、人種差別、暴力、殺人。
おぞましいのは、50年以上を経た今でも、差別が依然として残っていること。この事件を過去の「歴史」として語ることはできない、アメリカの闇。
翌68年には、キング牧師が暗殺されている。

重くのしかかる問題提起。終始圧倒される一本。