LalaーMukuーMerry

デトロイトのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.7
1967年7月23日~27日、アメリカで黒人による暴動(デトロイト暴動)があり、これをきっかけにデトロイトの自動車産業は斜陽化していった。この作品はデトロイト暴動の中で起きたアルジェ・モーテル事件という事件を、経験者の話から生々しく再現したもの。
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暴動の鎮圧にあたっていたデトロイト市警とミシガン州兵に対して、ホテル(アルジェ・モーテル)から発砲(おそらくトイ・ガン)した者がいた。これに反応して州兵と市警がホテルを襲撃し、犯人逮捕しようとして民間人に対して過度の脅しと殺人まで犯してしまったという事件だ。(私は、事件の名前はもちろん、デトロイト暴動というのも知らなかったワ)
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デトロイトは北部だし(黒人差別が酷かった南部ではない)、公民権法が制定された1964年以後は、法の上での人種差別はなくなったという時代なのだけれど、差別意識はデトロイト市警の警官の中にかなり残っていたようだ・・・
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などと冷静に書いていては、この映画のもの凄い緊迫感は伝わらない。ドキュメンタリー風の映像のおかげで(せいで)、自分が白人警官に銃を突きつけられて高圧的に脅される絵が頭の中に浮かび上がり、悪夢で目が覚めるほどの恐怖を覚える人がでてきてもおかしくない。恐怖の衝撃が私には結構なものだったので、マイルールによりこのスコア。
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アメリカの警官とはこんなのかと思うと、情けなくなる。もちろん暴動当時から50年近くたっているから、今のアメリカの警官はずっと良くなっている筈と期待するが、終盤の裁判の結果も、人権を尊重する国と世界のリーダーぶっているアメリカがこんなんで大丈夫か?とモヤモヤと暗い気持ちになる。
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監督(キャスリン・ビグロー)は「ハートロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティー」の監督ですか、ナルホド。ドキュメンタリー風の映像で惹きつけるワザはさすが。 白人警官役のウィル・ポールターは、私の中では「なんちゃって家族」「リトル・ランボー」でちょっと笑える個性派少年だったので、その印象を消すのに少し時間がかかりましたが、恐ろしい悪役もちゃんとこなしてました。