J四郎

デトロイトのJ四郎のレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.0
監督がキャスリン・ビグローなのでコレも重いテーマの作品。
題材が題材なだけにこの映画を観て愉快な気分にはならないでしょう。

実話ベースという事だが、それだけにストーリーが情け容赦ない。閉塞感を感じさせる映像も凄まじく、メインのモーテル事件の緊迫感たるや恐ろしいんだが見入ってしまう。それを実在した人間がやったってんだから恐怖感は下手なホラー映画以上です。

事件の描写も重厚で、黒人・白人とも極端な人物が少ない。黒人の暴動によって同じ黒人が不利益を被る様子。白人も全部が差別主義者なんて短絡的な描き方もしていない。ちゃんとそれぞれ人間として血が通っている部分に感心した。加害者側の弱さ、狼狽も実にリアル。

ただ一人、例外的に顔を見るだけでブチ殺したくなる警官がいるんだが、コイツだけ背景も無く悪の象徴みたいなヤツになってる。こう思わせる俳優さんの演技がスゴイってことだろうね。この警官ども、作中では差別もあるんだろうけど、彼らなりの(間違った)正義によって行動をしている気がした。

あ、そういやジョン・ボイエガが主演の一人だが、今作ではえっらい貫禄が出てんな~と思った。

この作品は1967年の事件だが、過去のことではなく現在進行形だと製作されてるだろうね。最後までムナクソの悪くなる展開が続くので体調の悪い時には観ない方がいいでしょう。ディスミュークスさんみたいにゲロ吐いちまうかも。

ただ、こんな世の中の理不尽ややり場のない怒りをぶつけられる事こそ、映画の持つ力のひとつなんでしょう。そんな強烈な想いが込められた作品に思えた。
J四郎

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