シャトニーニ

デトロイトのシャトニーニのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
3.6
デトロイトで実際に起きた警官による暴行事件をキャスリン・ビグローがリアルタッチで映画化。

詳細に綴られる事件の経緯と、おぞましい人種の対立。事件に直面したような映像感覚に心臓が凍りつきそうになった。映画は見る側が共感する人物を決められるのに、これは誰にしてみてもつらい。スター・ウォーズ続三部作のフィンことジョン・ボイエガが警官役なのも、複雑な目で見てしまう。
いままで人種モノの映画をいくつも見ているのに、シチュエーションに凝ったスリラー的な作り方はまだ少ない気もする、「ゲットアウト」はテーマがちょっと違う気がするし

古き良きアメリカというのもあるけれど、その裏には教科書で描ききれない奴隷や先住民、422部隊やバッファローソルジャー、未だに多い貧困層などの犠牲の上で成り立つ今の自由がある。自由ってなんだ本当に。

そして有色人種である日本人だって他人事とは言えない。同じ肌の色の人を妬むことがある、今も同じアジアの国を悪く言ったり言われたりもする。日本人だから大丈夫と思っても、コロナ禍のヨーロッパでアジア系と思われるだけで何かされた事件もあった。イーストウッドの『グラン・トリノ』でも主人公が朝鮮戦争帰りで、アジア系というだけで少年とその家族を最初避けていたのと同じ、向こうの人の一部は、まず肌の色で見るしかなかったのです。
誰だって目を背けたい軋轢と差別の歴史を映画で学びたい。昨今のミネソタ州の虐殺事件から始まった暴動から今こそ見ようと思い、鑑賞後は深く考えさせられるのであった。