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ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密のSPNminacoのレビュー・感想・評価

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ああまた「〜と〜の〜」シリーズか、と思ったら原題も『Professor Marston & the Wonder Women』だった(但し複数形なのがミソ)。
物語は「ワンダー・ウーマン」が燃やされ、原作者であるマーストン教授が倫理委員会に尋問される様子から始まる。1940年代当時のタブーを満載した『ワンダー・ウーマン』は如何にして誕生したのか?と辿っていくのだが、そもそも作者は漫画家じゃないの?という意外性と、その道のりがなかなか一筋縄でないところが面白い。まさかこんな背景があったとは。
軸となるのはマーストン&エリザベスの心理学者夫妻と助手オリーヴの関係。そこにフェミニズム、スパンキング、嘘発見器、同性愛、ボンデージといった後のコミックに登場する要素が関わる。といっても、ワンダー・ウーマンになるのはまだまだ先。
若く純粋で受け身なオリーヴはやがて主体性を持ち、自分の運命を変えていく。マーストン夫妻も内に隠された欲求を知り、それに従う。抑圧から解放された3人は、本当の望みを知るため更なる探求に向かう。そんな幾つかの契機を追って、映画はいよいよワンダー・ウーマン誕生の瞬間を迎えるのだ。
楽天的に理論を探求するマーストン教授、神経質でボス的なエリザベス、2人に導かれるようで実は導いているオリーヴ。根が学究肌なので、そこへ至る過程は衝動より論理的思考。そして世間的なコードを逸脱する度に訪れる悦びを、まるで秘めた能力が開花するかのように、神々しい光が祝福する(さすが監督は『恋のミニスカ ウエポン』のアンジェラ・ロビンソン)。
悪役として尋問される教授は、勿論コミック内善悪構図の反転だ。真実を追う者(3人)、それを拒否する者(尋問官やオリーヴの婚約者など)、非合理に固定化された男の世界と合理的な女の世界。ワンダー・ウーマンが生まれた必然が徐々に、スリリングに解明されていく。辿り着いた真理とは、愛は他人にジャッジされるものじゃないということ。
繰り返し説かれるDISC理論、特に「支配」と「服従」は解釈がやや難しいけれど、人を動かすのは愛と知性の力であって、決して暴力じゃない。本当の望みを暴力によって奪われる若者たちを見てきた、マーストン教授の戦争体験(それを始めたのは男だ)も影響したように思う。
レベッカ・ホールとベラ・ヒースコート、その間にルーク・エヴァンスを置いたバランスが絶妙だった。40Sファッションも素敵。
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