最初、「凡庸な悪」問題の映画かと思ってみたいだけど、映画が走り出したら拷問致死告発から民主化運動への流れを題材にした映画に。
「凡庸な悪」問題はアイヒマン裁判で大量虐殺を「言われたからやった」状態でお役所仕事として普通の人が消化していた、という。あれ。
作中の刑事は「言われたからやった」というよりは、贅沢や子供の医療費と言った、公務員では稼げない金銭を「お前も大変だろ」とさも目をかけたように言われ引き換え条件を呑んだのですが、狡猾な有り様が善良な人を取り込んでドツボに行くなんて怖いし、刑事も条件を呑むとき、家族の幸せと他人の冤罪を天秤にかけてしまったわけで。そもそも、並べちゃいけないもんですよ。
目が眩むような提案を前に、人は脆い。
「ペパーミントキャンディ」の軍から警察時代にかけてや他の作品でも、体制側に加担した側の背景までちゃんと入っていていつも善悪両輪の視点があり考えさせられます。
善も悪も造る側が視点を限定しない姿勢すごい。
果たして自分は、彼らと同じ立場の時、どうしてしまうのか。
そして何より俳優陣、熱演半端ない。すごい。
原題直訳は「普通の人」。
なお、史実は「1987」がより克明だと思う。