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ベルリン・シンドロームのmのレビュー・感想・評価

ベルリン・シンドローム(2017年製作の映画)
4.7
パッケージの感じからしてありがちな監禁スリラーかと思いきや、硬派な作品を手掛けてきたケイト・ショートランド監督の作品なのでその手の物とは全く違う。

ロマンチックな恋の空気感からいつの間にか監禁状態になってしまう独特な感じに作り物らしからぬリアリティがある(以前水井真希監督「ら」を観た時に感じた、当事者ならではのリアルな感覚をふと思い出した)。
ずっと抵抗し続ける訳ではない、脱出の為には受け入れるふりもするし彼女の感情は常に一定ではない。監禁状態の中でも窓の外の雪の美しさに目を奪われもする。
「幸色のワンルーム」を読んで喜んでいる方はこれを観て反省しましょうね。


監禁する男の人物造形が絶妙で、ぱっと見は好印象を抱ける人間で良き教師で良き息子でもあるが、女性に対してはあるラインを超えると絶妙に気持ちの悪い部分が不意に顔を出す男であるというのが生々しくて印象深い。
普段は優しくするのに、逃げようとすると突如彼が振りかざす暴力がまた生々しくて恐ろしい。


随所に見られる、『手』に現れる感情を印象的に切り取った表現が細やかで良い。


主演のテリーサ・パーマーの大きな眼を存分に活かした熱演が素晴らしかった。


最終的に彼女を助けようとするのがあの人なのもまた良い。


ちなみにケイト監督の次回作はまさかのマーベル映画で、スカーレット・ヨハンソン主演の「ブラック・ウィドウ」!暴れてきてほしい。
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