メル

トパーズのメルのレビュー・感想・評価

トパーズ(1969年製作の映画)
3.7
ヒッチコックの失敗作として名高いスパイ物(笑)

資料によるとハリウッド映画も赤字続きのためパラマウントとユニバーサルが併合、ワーナーとコロンビアが合体、MGMは製作ストップの時代だったとか。そんな時代に70歳になるヒッチおじちゃんは今作を撮った。

テーマは2つあって、一つは東西冷戦の時代にキューバ危機をどうやって回避したか…もう一つは「トパーズ」とは何なのか?
これを頭に置いて観ると分かり易い。

ソ連の高官がアメリアに亡命し、ソ連がキューバに核兵器を輸出している事を密告した。
ClAとしては一刻も早く詳しい情報を得たいところだけど、キューバはアメリア嫌いで入り込めない。
そこでフランスの情報局員をキューバに送り込んで情報集めをさせる。

果たしてそのフランス男は無事に情報を集めて帰国できるか?

そして「トパーズ」の存在を初めは無視していたソ連の高官だったが、アメリカの快適な生活に慣れるに従って口も軟化しその実態を語る。
それはソ連に協力的なフランスの高官グループの暗号名だという。

実はフランスのド・ゴール大統領の側近に共産党のスパイが居た…という事実を小説にしたベストセラーが原作らしい。

ストーリーとしてはちょっと行ったり来たりな感じもするけどキューバ危機を理解していれば、そしてヒッチコックファンならそこそこに楽しめる…と思う d(^_^o)

と言うのは映像面では「さすが、ヒッチおじちゃん!」と拍手をしたくなる所が幾つかあるから。

先づはオープニングから暫く無言で流れる亡命シーン。
その他、話しているのに台詞がこちらに聞こえないシーン。(それは何を話しているか私達は大体想像が付くからだ)

そして殺された女性のドレスが血の流れの様に広がるシーン。(このシーンだけでも見る価値あり!)
彼女は革命家の未亡人でありながら反革命分子の地下組織のボス。
革命家達に彼女は言う「あなた達はこの国を牢獄にした」と。

キューバとアメリカの国交が復活した今、この台詞は深いものがある。

この作品には3通りのエンディングがあり(笑) DVDのおまけで観ることが出来る。
フランスではヌーベルバーグが…アメリカではニューシネマが…と時代の波の中にあって、今迄の作り方で大丈夫なのかヒッチおじちゃんも色々と悩んだのだろうと思うと個人的には感慨深いものがある。
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