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あさがくるまえにのslowのレビュー・感想・評価

あさがくるまえに(2016年製作の映画)
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群像劇が見せる命のリレー。一日にどれだけの決断があって、人の物語は繋がって行くのだろうか。

静寂に絡み合う視線と息遣いが。いつもの微笑みと口づけが。突然、焼き付ける暇もなく戻らぬ日々となってしまったら。そんな瞬間の連続のような長い一日を追った物語であるにもかかわらず、苦悩するシーンはサラリと挿入される程度。カテル・キレヴェレ監督は、間接的に情報を伝える手法に長け、人の温もりや距離、肌感覚にこだわりを持ってその生と死を描いていく。
それぞれの人物もしっかりと存在感を示していく。その中でも、シモンとその彼女のエピソードの爽やかさ。そして、移植コーディネーターのトマの実直さはとても印象的。クレールを演じたアンヌ・ドルヴァルは、常連であるドラン作品の時の雰囲気とは打って変わり、物静かで柔らかい母親を演じてみせた。あんな表情、見たことなかったよ。

生きる速度は確実に変化して行くもの。時を追い越さんばかりの頃があれば、時を見送りたいと思える頃も訪れるのだろう。死の気配と生の気配の狭間で、生きる人々。その込み上げたものは、誰の想いだったのだろうか。
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