emily

あさがくるまえにのemilyのレビュー・感想・評価

あさがくるまえに(2016年製作の映画)
4.3
 朝が来る前に、サイモンはガールフレンドの家を抜け出し、朝焼け頃友人達とサーフィンに出かける。気持ち良い波に乗った帰り道、不運な交通事故にあい脳死状態と判定される。当然両親は受け入れることができないまま、臓器移植を提案される。一方パリでは息子二人を抱えるクレアが重い心臓病で臓器移植を必要としていたが、人の命と引き換えに自分の命を延命することに躊躇していた。

 冒頭から事故に至るまでの映像、途中挿入されるサイモンとガールフレンドとの出会いや、クレアの住むパリへの切り替えの映像など、随所で瑞々しく光と海のイメージを取り込み、映像美も楽しませてくれる。特に冒頭から事故に至るまでの、明け方の海、波の映像をしっかり見せ、海底に広がる世界までその先を予感させつつも、幸せな時間を瑞々しいタッチで描く。友人三人車に乗りかえり道、緑が広がる一本道と、海での幸せな時間が交差する。この時間がまるで永遠のように、ふわふわしててそれでいて残酷でもある。

 患者や寄り添う家族の視点だけでなく、医師や臓器移植コーディネーターなどの何気ないエピソードとして随所で挿入してくる。それぞれに生活があり、それぞれに苦悩がある。それをさらりと何気なく盛り込む事で、物語には立体感と一体感が生まれ、移植に至るまでにあらゆる人が関わり、命が命を繋ぎ、人と人の関わりが人を繋いでいく一連の流れを、生と命をしっかり交差させることで見せていく。ストーリーとしてはシンプルではあるが、考えさせる題材であり、その描き方はじわじわと観客の真意に迫ってくるものがある。死が命を繋ぎ、命は死に繋がっていく。人の体温と体温がふれあい、人は笑顔になっていく。人と人との繋がりは人を救い、人を助け、人を赦す・・・