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あさがくるまえにのKotaのレビュー・感想・評価

あさがくるまえに(2016年製作の映画)
3.7
17歳の少年シモンは友人とのサーフィンの帰りに車の事故に遭い脳死状態に。彼の両親は彼の心臓を他の人に移植するかの決断を突然迫られる。

知識をあえてなにも入れずにみたから、次々に焦点が当たる人々に誰が主役なのか戸惑ったけど、主役なんていなくてこれは私たちの周りに意識していなくても取り巻く“生”と“死”についての物語なのだと最後で分かった。フランスの若手女性監督カテルキレヴェレによるまさにフランス映画で、言葉が少なく人の表情にフォーカスした創りは、女性版クサヴィエドラン。

とりあえず冒頭シモンが彼女の家をでて、友人とサーフィンをして帰りの車で事故に遭うまでが美しかった(不適切だけど、もちろん映画として)。徹夜明けで体も疲れきった朝焼けの道路。風力発電が永遠に続き、その単調な光景は眠気をさそう。ついさっきまでのサーフィンの波の感覚が眠気と一体になり波が迫って来るように事故に遭う。なんと素晴らしいシーンだろう。ここだけで満足。

シモンと両親だけでなく、病院の医者や、疲れ切った看護婦、ドナーの仲介業者や、移植を学ぶ研修医など様々な人の(普通脇役ならありえないほどの)説明描写に、24時間の心臓移植に関わったつまり命を次の命に運んだ人々自身にも命があり、人生があるという事を凄く感じた。ハリウッドの病気物映画と違い御涙頂戴でもミラクル展開でもない所がなんともリアルで斬新。

“あさがくるまえに”という何故か全てひらがなの邦題は嫌いじゃない。原題のフランス語を訳すと「命を治す(繋ぐ)」的な意味になると思うけど。まぁ、いかんせん血が苦手だから手術のシーンはほとんど観れなかったのが残念な所ではある。笑
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