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ポリーナ、私を踊るのくりふのレビュー・感想・評価

ポリーナ、私を踊る(2016年製作の映画)
3.0
【唐突少女】

原作バンドデシネがとても好きで、どうやって実写化するの? と興味湧いたので行きました。

が、やはりBD特有の魅力は再現不可能で、ストーリーラインほぼ同一でも別物のような、堅実で並の実写映画だった。

演者の魅力や、いい場面はあったが全体では凸凹あるなあと思った。色々と首を傾げてしまうところもあって。

ヒロインは幼い頃から踊る意志が強い、というのはわかるっちゃわかるけど、変化や成長がどうもシームレスに伝わらない。

少女時代パートで、演技力のない子供に堅いセリフ与えてぎこちないなあ…と思っていると突然、主演アナスタシア・シェフツォヴァ本人に代わって驚いた。まだまだ未熟な修行中ティーンだろう筈が、明らかに20歳過ぎの出来上がった肢体に変わるので、もう舞台に立っているの?と勘違いしちゃった。

ダンサーとしては原作に倣い、三つの舞台(国)を経て三段跳びのように成長する構成で、結果的に三幕構成となっている。これは面白いのだけれど、クラシックからコンテンポラリーに目移りする第二幕目まではまあ、理解できるが三幕目は何故そこに行くのか、映画内からはわからなかった。ホップからステップ抜きでジャンプしちゃった感。

ここは、異質なもの同士が所謂ケミストリーを起こしたのだろうな、と想像できる原作の方がわかり易いしほお!と思った。映画は後半、だらだら無為な毎日を過ごし、ただモラトリアムるだけなのにある日突然、巧く行ってしまうような唐突さがある。

最後のパフォーマンスが具体的に、どのように出来上がったか因果関係がよくわからない。新たなダンサーを誕生させるなら、映画の物語として描くべきはそこじゃないのか。

最後の舞台は、単体の生舞台として見たら、心動かされたかもしれない。が、ストーリーの繋がり…というか、今まで見てきたポリーナの人生から、このダンスがここでこう生まれることには違和感をおぼえた。

ポリーナ両親の物語は切ないね。本作からは様々なダンス系映画を連想したけれど、まだドキュメンタリーが公開中のセルゲイ・ポルーニンとよく似た家庭事情で、驚くほど。ロシアではよくあるケースなのだろうか。

しかし、ポリーナパパがなー、この流れだとあのタイミングでああなって、それをきっかけにポリーナはあなるのだろうな…という予想通りの展開で、苦笑してしまった。

映画での“私を踊る”映像としては、例えば『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』での、カラフルな人種と体躯のダンサーさんたちが素晴らしかったので、つい比べてしまった。本作最後の舞台は、第三幕でなく第二幕でのカンパニー内で十分実現できたんじゃないの、とか。

どうも私にとっては、ポリーナの表現者としての葛藤というより、より身勝手さを感じてしまい、殆どシンクロできなかったのでありました。

でも、アナスタシアちゃん本人には、今後頑張ってほしいなあ、と思います。

あと、ジュリエット・ビノシュの振付師役ド嵌りぶりにはホント、驚きました。数年前まで舞台芸術には興味がなかったので、ダンサーとしてアクラム・カーンと舞台を踏んでいた、という過去を知らず…見たかったなあ、と思いました。

<2017.10.29記>
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