slow

ポリーナ、私を踊るのslowのレビュー・感想・評価

ポリーナ、私を踊る(2016年製作の映画)
-
フランスグラフィックノベルの映画化。日本で言うところの漫画原作の映画なのかな。しかし、スポ根的な熱も程々。恋も深みにはまらず程々。日本漫画に慣れた感覚で観てしまうと、物足りなさや不満も出てきそう。
2人いる監督のうち、1人はドキュメンタリー畑の方、もう1人は振付家の方らしく、ダンスも出演者自らが実演することにこだわったとのこと。だからここまでリアリティがあるのか。中でも感心したのがジュリエット・ビノシュ。彼女こんなに踊れたんだね。最初オーラを消していたからか彼女だと気が付かなかったよ。ニールス・シュナイダーも撮影前に特訓したらしく、それなりに。でも、なんと言ってもポリーナ役のアナスタシア・シェフツォワの魅力に尽きる。撮影前まではカンパニーでバレエダンサーとして活躍していたけど、撮影を機にコンテンポラリーダンスに目覚めたのだそう。まさにポリーナの人生そのもの。

序盤、雪の中を本能のままに踊り狂うポリーナの姿が最高に良い。そこまではフランス版『リトル・ダンサー』のような作品かなと思っていたけど、こちらは幼少期というよりは思春期の頃に大きく時間を割いた物語。基本的にあまり感情的にならないのだけど、ここぞという場面で魅せるダンスには心を震わされる。日常に溢れるありふれた動きがポリーナのフィルターを通してダンスのモーションとして昇華されていく感じとか、心と身体の軸を見つけてそのゾーンから生み出していく振り付けとか、容姿の魅力も相まって十分見応えがあった。

ポリーナの前に現れた人生の機会は、悠然としていながら隙を見せず、ひとつの壁を越えたところでまた見失う。それは、まだ時ではないということなのか、それとも恐れをなして立ち去ったのか。あの日の世界はいつまでも白く、私を踊らせる。
slow

slow