mimitakoyaki

マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.6
「イカとクジラ」とも通じるような家族間のままならなさをこれまた丹念に描いてて、ほんとに素晴らしいです。
拗らせたまま大人になった面倒な人たちを愛おしく描くのがうますぎます。

機能不全家族とまではいかないのかもしれないけど、あんなお父さん、一緒に過ごすのツラいです。
プライドはめちゃくちゃ高くて、自分の事は良く見せようと必死な反面、素直に他人の功績や良さを認められないし、思うように世間から認められてない自分のプライドを傷つけたくなくないから、とにかく不平不満に溢れ、皮肉や否定ばかり。
自尊心を保つのに必死で痛々しいくらいです。

子ども達はそんな父親のもとで肯定感を削られて育ち、父親を許せない気持ちと、でも憎み切れない気持ちもあり、愛されたい、認められたい欲求など、そんな愛憎がこんがらがってスッタモンダしながら、父親との関係、兄弟との関係を見つめ直し折り合いをつけていくんですね。

だけど、いつも自己中心的で強気な父親が、実は現実と向き合い切れない弱さがある、彼の言うところの「負け犬の強がり」だということに息子達が気付いていったり、父親の嫌なところが自分にもソックリそのままあったりする嫌な感じとか、父親なりに愛してくれてたのかなとか、小さな出来事を重ねながら、登場人物達が少しずつ変化していく心の機微が描かれていて、そういうところがたまらなく良かったです。

長男が父親と再婚相手が住む実家に行って、久々に家族が再会した時のぎこちなさや気まずさがすごくて笑えるし、会話の中で互いの微妙な関係性を炙り出していくのが毎度のことながら本当に巧くて、このバツの悪さに引き込まれます。

また、長男は妻とは離婚することになったけど、娘とは仲良しで大事に育てただけあって良い子なんだけど、その子が大学で作ってる自主制作映画がこの上なく気まずくて笑
よくコレを親やら親戚に見せたもんだと思って正気を疑うけど、それを受け入れる家族もすごい笑

とにかく気まずいことばかりが起きていくけど、その間に挟み込まれるギャグも面白くて、父親の上着のポケットに入ってた映画の半券から、その映画見に行ったんやというツッコミを入れたくなるヤツです。

キャストも、ベンスティラーやアダムサンドラーがすごく良いし、シガニーウィーバーやアダムドライバーがチラッと出てくるサプライズがうれしい♡

それぞれが心に抱えるわだかまりや関係性の変化を会話でこれだけ見せてくれるって、バームバックのすごさをあらためて感じました。
これ不器用家族モノの傑作だと思います。

13
mimitakoyaki

mimitakoyaki