回想シーンでご飯3杯いける

マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.8
カンヌ映画祭で上映されたものの、配信作品である事から受賞対象から外すべきとの議論を呼んだ作品。逆に言えば、配信作品である点を除けばパルム・ドール受賞に相応しいレベルの作品という事でもある。

頑固な彫刻家の父が、作品もろとも家を売り出すと言い出し、3人の兄弟が集まりすったもんだするホームコメディ。そして、この3人が全員、異母兄弟という、なかなかエキセントリックな設定で、ウディ・アレン作品並みに台詞も多く、ややハードルが高い作品であるのは確か。しかし、アダム・サンドラー、ベン・スティラー、ダスティン・ホフマン等のベテランに加え、ちょい役でアダム・ドライバーも出ていて、役者陣の演技は申し分なく、中盤にはすっかり作品世界に引き込まれた。

中盤で、父親が昏睡状態に陥る。ただ、これはお涙頂戴的な展開ではなく、前半で喋りまくっていた父親を"黙らせる"ための演出上の名目なのだろう。ここで父親という唯一の血縁を失った異母兄弟の、人生初の協力が始まる。3人の兄弟は既に中年。なかなか素直に向き合う事が出来ないのだが、それもまた父親譲りのDNAであり、何とも微笑ましい。

タイトルの後ろに付く「改訂版」は、作品としての「マイヤーウィッツ家の人々」の改訂版という意味ではなく、マイヤーウィッツ一家が騒動を経て、ほんの少しだけ新しく生まれ変わった事を指すのだろう。何とも粋なタイトルである。