ちろる

マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)のちろるのレビュー・感想・評価

3.7
特に話に抑揚はない淡々とした家族の会話劇なのだけど、一つ一つのシーンに味わいがある。
息子がアダム・サンドラーとベン・スティラー、そして娘はエリザベス・マーヴェル。
そして気難しい彫刻家であるお父ちゃんはダスティ・ホフマンとキャスティングはめちゃくちゃ豪華なのでこの家族の不協和音が観てるだけで居心地悪くて、それが面白い。

なによりもダスティ・ホフマン演じる父親ハロルドは、非常にプライド高く、それでいて子どもに対しての贔屓なんかも激しいめちゃくちゃめんどくさい存在。
この父親にみんなが振り回される感じが割とリアルで、この老人特有の厄介さに多くの人が共感してため息つく人も多いんじゃないかな。

ピアノの才能がありながらり思うように父の望むように出来のよい芸術家になれないダニー(アダムサンドラー)と、父に一番期待され、父の一番の自慢の息子である異母弟のマシュー(ベン・スティラー)は、父に対しては一番冷めている。
愛情の矢印が全部一方通行でみんなうまく満たされない。
小さな苛立ちは与えるのに、徹底的にひどい父親でもないから裏切れなくて、いっそのこと心から嫌いになれるほどひどい事してくれたら良かったのにと思う。
そんな、細い柱で支えられてるような、すごく脆い家族だけど、「家族」というコミュニティだけはそう簡単に崩れない。
綺麗事がほとんどなくて、秀逸な会話劇の中だけでラストに向けて、少しずつ互いを許し合い、愛情を示していくから、だんだんとこちらの心が溶けていくような感覚になれたお話でした。
ちろる

ちろる