モウドクウサギ

きっと、いい日が待っているのモウドクウサギのレビュー・感想・評価

4.6
タイトルやポスターから「よくある、ぬるい感動作なんでしょ?」と、タカを括っていると痛い目にあう。67年のコペンハーゲン、病気のシングルマザーに育てられていた兄弟は、程なく児童養護施設に預けられる。しかし、そこで待ち受けるのは生き地獄の日々だった。マッツ・ミケルセンの兄であるラース演ずる鬼校長による、徹底的に抑圧された施設では、体罰が日常化していた。教師による体罰が法律により禁止されていたが、兄弟は教師による体罰に加え、いじめや、逃げ出そうとすると連れ戻されリンチ…、さらには教師によるレイプと、それらを隠蔽する校長…。兄弟を気にかける先生も施設を去り、徹底的に追い込まれていく。そんな中でも、弟のエルマーは宇宙飛行士に夢を抱き、世間では月面着陸をこころみるアポロ計画が進行していた。いかにして悲惨な現実を打ち破るのか、しっかり引き込み、目が離せない実話ベースの快作だ。
デンマーク本国におけるアカデミー賞を6部門受賞した今作は、妥協の無い役作りが極めて高いレベルで結実している。主人公兄弟ふたりは言わずもがな、彼らを虐待する校長はじめ先生方も「演技とはいえ辛かろう…」と思わせる程で、特に鬼校長はぶっ殺したくなるレベルでムカつくので流石としか言いようがない。
今回は恵比寿ガーデンシネマのトークショウあり上映会に参加したが、北欧ラボさんによる補足に目から鱗だった。劇中での緑瓶の液体は?また、当時の市民運動から、北欧諸国における「体罰に対する法規制」の成り立ち等、全くと言っていいほど知らない話が聞け、北欧に対する興味が増した。