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きっと、いい日が待っているのbのレビュー・感想・評価

5.0
本作は残酷で許しがたく非人道的な"体罰"という傷害罪であり暴行罪であるものが、"教育"として正当化されていた時代、1967年コペンハーゲンで起きた実話が基になっています。

【あらすじ】
13歳のエリックと10歳のエルマーは病を患う母親と3人暮らしをしており、貧しいながらも慎ましく幸せに暮らしていた。ある日、病気の悪化した母は入院することになり、役人の判断で兄弟は男子児童むけの養護施設へと預けられることになる。
この養護施設では少年達が強制暴力、薬物投与というあまりにも凄惨な扱いを受けていた。さらに逃亡を謀ろうとしても強制送還の後、"しつけ"と称した陰惨な暴力という逃げ道のない絶望的な日常が続く。そんな過酷な現実の中、必死に生きる少年達の姿をエリック/エルマー兄弟を中心に描いた作品。
(一部パンフレットより引用)

弟エルマーの抱く宇宙飛行士になるという夢、それは宇宙に行き月面着陸すれば世界が変わると本気で信じているからです。そんなエルマーに対し、幾度となく非常な現実と(希望を失った)大人達が希望を信じる心をへし折ろうとしてきます。
それでも希望を語り続けるエルマーの姿(希望の手紙を読むシーンは最高)が周囲に勇気と希望を与え、子どもという弱者が大人という強者に対し蜂起を起こしていく姿は感動という言葉では表し切れません。

ラスト近く、兄エリックのため命を賭してある勇猛果敢な行動をとった、エルマーの心を支え奮い立たせたものは何だったか?それは2001年宇宙の旅のレコード(ツァラトゥストラはかく語りき)でした。これは、芸術が現実に対抗する手段であるというメッセージであり、そして映画という総合芸術である本作自体が我々観客に明日への希望を信じる強さと現実と戦う勇気を与えてくれます。
宇宙遊泳を夢想するシーンは若干滑稽にも見えかねませんが、決して馬鹿には出来ないもので、希望を想い描く想像力は生きる上で本当に大切なものです。

最後に、
苛烈な暴力が少年達を心身ともに追い込み続けました。勿論これは殴る蹴る等の物理的暴力以外にも、罵詈雑言での恫喝により精神的な苦痛を与える事も同罪です。映画の最後に注釈がありましたが、この映画のモデルとなった施設に入っていた少年達の多くが、後に精神疾患を患っていることからも分かる通り、体罰というものがどれ程愚かな行為かは明白ですし、体罰は決して人を育てません。
エリック/エルマー兄弟の家庭の貧しさの一つの要因として男女不平等の賃金格差があり、そういった女性差別もまた、明日への希望を持った活動家の方達の活躍の結果デンマークでは改善されていったそうです。日本は未だ男性優位社会であり、現在そういった改善がままならない状況なのは由々しき事態だと思います。
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