ちろる

きっと、いい日が待っているのちろるのレビュー・感想・評価

4.7
初めは彼ら兄弟の手の中には何もなかった。
むしろあるのは絶望だけだった。
しかし守るべきものがあって、叶えたい夢があればその絶望でさえもたった一歩の勇気に変えることはできるのだ。

理不尽な辛いストーリーだったはずなのに終わった後は、なぜだか美しいシーンばかりが走馬灯のように思い起こされる不思議な作品だった。
実話ベースにした話の中でもフィクションがここまでバランス良く混じり合った作品はそうそうないんじゃないかと思う。
なんでこんな日にタオルハンカチ忘れてしまったのだろう。
ただ、観てる途中からずっと弟エルマーを抱きしめたかった。いまもずっと。
多分いつの間にか女性教師ハマーショイ先生の気持ちになっていたようだ。

福祉という名の「悪」はタチが悪く、生活力のない子供に太刀打ちなんか出来るわけもない。もがくほどに状況は悪化していき、彼ら兄弟に唯一残される「希望」でさえも次々と打ち砕いて、そこはもう同じデンマーク出身のラース フォントリアー監督の後輩らしく、これでもかと子供の運命にも容赦無い。
でも、この兄弟は打ちのめされないしひたすら強かった。
「想像力」「兄弟愛」「勇気」とかそういう簡単な言葉では言い表しきれないほど、兄弟2人の魂が揺るぎない北極星のように輝いて眩しい。
純粋な想いゆえの破天荒さは、私が抱いたどうしようもない理不尽さへの怒りを吹き飛ばすほどに清々しいものだった。

デンマークの役者さんはあまり知らないけれど、脚本も役者さんのキャスティングも本当に素晴らしい。校長のサイコパスさ、エルマー役の少年が成長する演技、そして個人的には新任教師ハマーショイ先生の弱さと迷いの残る不器用な彼女の演技にはずっと感情移入していた。

もっともっと押し寄せる色んな感情があるのにもう私は上手く文章にできない。
だからもうこの想いは胸にしまって忘れないようにしよう。
ともあれこんな魅力的な作品に出会えて幸せ。
ちろる

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