<概説>
冷戦時代、どこかの研究所にて。搬送された謎の水棲生物と唖者の女性がただならぬ恋に落ちる。巨大な陰謀が彼等を包囲する中で、近代の異類婚姻譚は大団円を迎えることができるのか。
『パンズ・ラビリンス』の監督による異色のラブロマンス。
<感想>
本来美しくないはずのことが美しい。
この矛盾した作風がすごく好きです。
カラー映画とモノクロ映画で美しいのは?
人間の柔肌と怪物の表皮で美しいのは?
明瞭な会話と歪な手話で美しいのは?
本来の答えと本作の答え。そのどれもが真逆。
作中数少ないイライザの発声シーンが特にソレを象徴していて、嗚呼滅多にできる作品じゃないと感じいります。
そのくせ寓話としては王道も王道。
異類婚姻譚は種などハナから問題ではない。
悪人は悪人のまま路傍に野垂れて仕舞い。
愛と善が最期には隣人を救うであろう。
同監督作『パンズ・ラビリンス』にしてもやや流血描写が用いられますが、大団円にならぬのはせいぜいその程度。
最期には劇中人物と観客の両者に救済がある。
この「見てよかった」という素直な体験こそ、本作のアカデミー賞たる資質を示しているようです。