MasaichiYaguchi

シェイプ・オブ・ウォーターのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.3
ギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作を担当し、第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した本作はファンタジックな美しさと愛に満ちている。
その愛には主人公たちが紡いでいくものだけではなく、作品に度々登場する50年代の様々な映画やヒロインが住んでいる場所から伝わって来るものが含まれている。
映画としては、デル・トロ監督の代表作である「パンズ・ラビリンス」と同様のダークファンタジーなのだが、描かれたテーマの崇高性、映像の美しさからいって集大成的な作品だと思う。
1962年、東西冷戦下のアメリカにある政府の極秘研究所を舞台に、そこで清掃員として働くイライザが、アマゾンの奥地から持ち込まれた不思議な生き物と出会ったことからファンタジー・ロマンスの幕が上がる。
モンスターとも呼べる不思議な生き物との恋愛なんてと言う人もいると思うが、昨年大ヒットしたディズニー映画「美女と野獣」でウットリした人は少なくなかった筈だ。
ただ本作で恋愛劇を繰り広げるのは美女でもなければ、魔法が解けて野獣からイケメン王子になる相手でもない。
イライザは子供時代のトラウマで声が出ない、何処でもいそうな中年女性であり、不思議な生き物も如何にもというヴィジュアルだ。
この作品で中心となる2人をはじめとした主要登場人物たち、イライザの隣人ジャイルズ、職場の同僚のゼルダは社会的に疎外されていて、孤独や葛藤を抱えている。
また、社会的に認められて地位もあるホフステトラー博士や、イライザたちと対立するストリックランドも夫々の立場で瀬戸際にいる。
不寛容な世相と言われる昨今だが、1962年を舞台にしている本作では人種差別、同性愛、職業の貴賎が色濃く描かれていて、それが作品のバックボーンになっている。
東西冷戦の状況下、米ソの思惑で絶体絶命のピンチに陥っていく不思議な生き物とイライザだが、2人の恋の行方は?
イライザを演じるサリー・ホーキンスは、現在、「2」が絶賛公開中の「パディントン」でのお母さん役での印象が強いが、本作では一人の女性としての魅力が溢れていて、物語が進むに連れてどんどん綺麗になっていく。
更に不思議な生き物さえもダビデのような凛々しくなっていく。
そして、幕開けのシーンに繋がるようなラストが夢のように美しくて心に何時迄も残る。