じぇれ

シェイプ・オブ・ウォーターのじぇれのレビュー・感想・評価

4.0
【愛とはどんな形をしているのだろう?】

デル・トロの異形愛に満ちたダーク・ファンタジー。

言葉を失った中年女性と半魚人の愛。これを主軸に、マイノリティを巡る、アメリカの現状も描かれ、シンプルなストーリーながら重層的な仕上がりに。思っていたよりも、アカデミー会員好みの作品ですね。

さて、本作を評する時に「愛には形はない。好きになったらそれが愛なんだ!」という切り口が用いられています。
おそらく、そのようなポジティブなメッセージとして受け止めるのが正解でしょう。
しかし、私は少々ひねくれておりまして(^_^)ゞ

本作には、主人公カップル以外にも、複数の愛が登場します。それらの共通点は性欲が大きなウェイトを占めているということ。
また、主人公たちが愛し合う根拠が弱いという指摘もあります。
これらを総合すると、少し違った見方ができます。
水は形を変える。そのように、人はただの水を愛と勘違いしているだけだ、という解釈です。
脇の人物の性描写を執拗に描くことの意味を考えれば、主人公カップルの愛の正体も見え方が変わってくるんです。

私たち人間は、性欲を介して愛という勘違いをしていく。でも、たとえ勘違いであっても、真の愛になっていけばいいなぁという、デル・トロの優しい視点を感じたのは、ただの深読みですかねぇ。

とまぁ、いつものごとく、長い駄文を書いてしまいました(笑)

独特の世界観にあっという間に引き込んでしまう導入部が秀逸な本作。映像と音楽もよく、デル・トロのイマジネーションが爆発した美しいシーンも盛り沢山。
性描写・バイオレンス描写が少々過激なので、観る人は選びますが、なかなかの力作です。
是非とも劇場でご覧下さい。

ただし、付き合い始めのウブなカップルは、デートに使わないように! 確実に気まずくなります(笑)

※おまけとして、コメント欄に裏解釈を書いておきました。こちらは、ラストのネタバレをしています。鑑賞後に読まれることをオススメします。
じぇれ

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